そらのわすれもの2
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知秋は、すぐには教室に戻らず、教室の前の廊下の掃除用具入れに向かい、バケツを取り出した。ガチャンガチャンと乱暴な音が掃除用具入れにこだます。
とにかく、酷く気分が悪かった。
自分の周りに流れる鬱々とした空気が嫌で仕方がなかった。
どうして、自分はこんな風に生まれてきたのか。
なんで、中途半端に人間ごっこをさせられているのか。
なんで、こんなに寂しい気持ちにならなくちゃいけないのか。
身体。
心。
境遇。
知秋は、自分の持っている全てのものが気に入らなかった。
そう言った気持ちになる時、決まって彼女は、心底、生みの親である竜也を恨んだ。
知秋は、乱暴にバケツを持って歩くと、洗面台に行き、バケツに水を入れる。
ザーっと水が流れる音を聞くと、それと共に何かが流れていくような気がして、知秋は少しだけ頭が冷静になっていくような気がした。
「知秋、大丈夫?」
知秋が振り替えると、そこには親友の美紗がいた。