そらのわすれもの2
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知秋は、生徒指導室に一人ポツンといた。朝の日射しが差し込み、知秋の栗色の髪をオレンジに染める。知秋は、真っ白な壁に手をつき、大きく溜め息をついた。
勿論、彼女は望んでここに来たわけではない。この学校の英語科教師、風間琴恵に呼び出されたのだ。
(また、琴恵に呼び出された。)
知秋は、うんざりする。今月だけで、3度目。今度は何の話だろうか…こは走っていき、挨拶もなしに、抗議を入れた。
「琴恵、何で、全校放送で呼び出すんだよ!目立つだろ!?」
今月3回目のやり取りだ。いい加減にして貰いたいとわ知秋は思った。このままでは、全校生徒に名前を覚えられる日も遠くはない。
しかし、琴恵はそれに応じず、呆れた顔で、知秋の目の前に持ってきた2冊のノートを突き出した。それを見ると知秋の顔色が変わった。
「この和訳の宿題、美紗のノート写したでしょ。」
「うっ!!」
知秋は、小さな悲鳴をあげると、心当たりがあるらしく、大人しくなった。
「訳が飛躍しすぎなのよ、彼女のは。」
そういうと琴恵は2冊のノートを机に置いて、椅子に座った。このままでは、彼女のペースに飲まれてしまう…。知秋は怯まずに立ったまま、琴恵に文句を言った。
「宿題やる時間がないことくらい琴恵は知っているだろ!?夜の時間が使えないんだよ!!見逃してくれてもいいじゃないか!!」