Savior 第一部 救世主と魔女Ⅲ
リゼの呟きに、アルベルトは考える。
何もかも救う方法を。片方を犠牲にしなくても。誰かに何かを強いなくても。
救えるものの境界線を引かれたら、どうしたらいいのか。
片方を選ばなくてはならなくなったら、どうしたらいいのか。
例えば敬虔な信者も、教えを守れない罪人も、あるいは異教徒も、苦しんでいる人は分け隔てなく救いたいと思ったらどうしたらいいのか。
全て救う方法はどこにもないのだろうか?
「それでも、俺なら誰も犠牲にせずに相手を救う方法を探すよ。それが一番だろう?」
夢見がちだの理想論だのと言われそうだなとは思ったけれども、それでも偽りない本心をアルベルトは呟くように話した。どちらかを見捨てるなんて、自分には出来そうもない。たとえどれほど無理だと言われようとも全てを救う方法を探して、それが出来なければ己の無力さを悔やむのだろう。そうなることは、分かっている。
「・・・・・・そうね」
リゼは感情を見せることなく、淡々と言った。アルベルトの考えを否定するのでもなく賛同するのでもなく、ただ頷く。
「そんな方法があるといいわね」
その言葉はどことなく、そうなることを祈っているようにも思えた。
――To be continued
作品名:Savior 第一部 救世主と魔女Ⅲ 作家名:紫苑