Grass Street'90 MOTHERS 10-18
「……ホントに悪いのは、あの人じゃないの……もう……いな……だけど…こんなの……ひどい……」
しばらく無言で俺を見据えてから、川本はゆっくりと立ち上がり、ドアの方を向いた。それでも、俺は、何も言えなかった。知ることすら怖かった。完全に気が臆していた。俺は甘すぎた。彼女の抱えている問題は、果たして俺なんかが一緒に背負いこめるものだろうか。
一体俺に何ができるというのだろう。
川本はドアに向かって歩いて行く。一瞬、自分の両手に目をやり、それから顔を上げて静かに出て行った。
俺にできるのは、その後ろ姿を目で追うことだけだった。
作品名:Grass Street'90 MOTHERS 10-18 作家名:MINO