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鳴神の娘 最終章「絆を絶つ者」

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 ――後日。
 宮殿を消失した大和は、一時都を移し、第三皇子白髪を大王(第二十二代清寧天皇)に立てた。
 しかしこの大王には后も御子もなかった為、皇統は彼の代で絶えてしまった。大和では後継をめぐって激しい諍いが起こり、それはやがて周辺豪族を巻き込んだ内乱となって、大和自身の弱体化を招いた。
 一方、加夜の女首長となった「大吉備津姫」は、里の復興に力を注いだ後、吉備五氏族を統一し、吉備王国全土を統べる初代の女王となった。
 この女王のもと、吉備王国は力を蓄え、やがてその勢力を全国へと拡大していく。吉備は求心力を失った大和に代わり、新たなる豊葦原の盟主として、その地位を揺るぎないものにしていった。
 吉備に偉大なる発展をもたらした女王は、死後その功績を讃えられ、後の世の人々に守護神として祀られた。
 
 吉備の中山にある「吉備津神社」の祭神には、今も「大吉備津彦」と並んで「大吉備津姫」の名が刻まれている。



真金吹く 吉備の中山帯びにせる
       細谷川の おとのさやけさ      (古今和歌集)





【完】