Da.sh Ⅱ
「お前、最近ちょくちょく見かけるようになったがぁ、新顔だな」
公園のベンチに座って寒さに縮こまりながら、ボーッと帰宅を急ぐサラリーマンたちを見ていると、ホームレスらしき白髪のぼさぼさ頭の男から声を掛けられ、ギョッとした。こういう手合いは、苦手だ。
なんだか・・・怖い。
黙って立ち去ろうとしたが、さらに声が追っかけて来た。
「食いもんはあるのかぃ、それとぉ、ねぐらと」
防寒着のポケットに、手を突っ込んだ。
小銭で膨らんでいる財布を握りしめた。砂糖入りの缶コーヒーが2回と、ポタージュ缶を飲んだだけだから、残っているのは・・・400円ぐらい、か。
マクドに行くか夜通し歩き続けるか、だが・・・釣銭あさりだな、稼がないことには。たまにはサウナ行って、あったかい所でゆっくり眠りたいし。
あったかい部屋で寝ている姿を夢想して突っ立ったままでいると、オレの表情を見ていたのか、そいつはオレの耳に囁きかけるほどに近寄ってきた。
「付いてきな」
プヮ〜ンとした臭い息を吹きかけ、目尻を下げたその男はそう言うと歩き始めた。
「心配するなって。悪いことするわけじゃぁ、ねえからよ」
振り返って、さらに目を細めて付け足した。