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架空植物園

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おんりょう草


葉緑素をつくるという植物の当たり前のことを止めて、他の植物に寄生することを選んだ白く太い茎。その先端に雁首のような白い花がある。常緑樹に囲まれた昼でも薄暗い場所にその花はあった。丈も150?ほどあり、遠目には幽霊に見えるかもしれない。だから名前が〈おんりょう草〉という名がついたのだろう。なぜ幽霊草とつかなかったのかは意味があった。怨霊と温霊(おんりょう)のふたつの顔があるということだ。

この〈おんりょう草〉と対峙していると、怨霊が現れるらしい。噂を聞きつけたテレビ局が、霊に詳しいゲストと芸能人によるロケを試みたが、現れることはなかった。遠方からのカメラ撮影でも霊らしいものは何も映らなかった。霊なのだから当然と言えば当然である。もちろん音声も確認することはなかった。

それでも、この花が咲く季節が秋の彼岸ということもあって、訪れる者がいる。それはもう一つの意味温かい霊=温霊に会いたい為である。かなり確率は低いのであるが、亡くなった者に会えて、話が聞けるということだった。これも一人だけで対峙した場合に限るということで、本人の思い込みと科学者は結論付けている。

作品名:架空植物園 作家名:伊達梁川