図書館
ボクとキミは、本を本棚に戻しながら、地下への階段に向かった。
途中、キミの足は 平たい円形の自動掃除機に止められたけれど、ボクの後をちょこちょこと追いかけてきた。
まあキミらしくていいけど、まったく何処の……。
ボクは、ふっと息を漏らしてキミを見た。
見返すキミの目は、ただキラキラと、闇の猫の目のように ボクを惹きつけた。
昼少し前の食堂は、座わる場所も空いていた。
売店でそれぞれに選び、レジで並ぶキミの手元から、チョコが練りこんであるパンとオレンジジュースを取り上げると、いっしょに会計を済ませた。
「駄目だよ。ちゃんと払うからね」
「此処へ誘ってくれた代わり。ってフルコースじゃ無理だけどね。あはは」
「……ごちそうさま」
百円玉二枚でお釣りが返ってきたキミの昼食に、きちんとお礼を言ってくれた。
「もう少し大丈夫?」
「私も、まだ読みたい本があるの。だから構わないにゃん」
「あ、そう……(本当に読んでいるのかい?)」
ボクとキミは、そこで三十分ほど過ごしたけれど、次第に人が増えてきたので図書館の方へ戻った。
階段を上がり見回すと、先ほどの席がまだ空いていた。
キミは、足早にそのテーブルへと行き、バッグを置いてボクに小さく手招きをした。
「此処、空いていて良かったね。やっぱりいい感じ」
昼を過ぎ、陽射しの方向も変わったのか、薄暗かった天井近くの窓に陽が当たって硝子のカット模様が輝いていた。
ボクは、原稿用紙を広げて書き始めた。
キミは、本を取りに行ったのかな。本棚の間を行ったり来たりして、見え隠れしている。
大きなサイズの絵本を持って戻って来た。
表紙に天使が描かれてあるからクリスマスのお話かと思って見ると、何色もの緑色で描かれた野原に、小さな男の子と 天使が出逢ったというお話らしい。
どんな人が描いたのだろう……ボクも好きな絵に時々覗き込んだ。