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図書館

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柔らかな陽射しと 時折、そよ風が心地良く吹く中をボクとキミは 街で一番大きな図書館にやってきた。歴史を感じる立派な図書館ではないけれど、入り口辺りには大きな木が茂り、一部タイルの貼られた落ちついた外観の建物だった。
一緒に来たかったの。とキミに誘われ、初めてその図書館に入っていくボクが居る。

二重に設置された硝子の自動扉は、冷暖房の効果を保つ為なのだろうか。誰でも立ち寄れるようにと 自動扉やバリヤフリーの床も公共の場であることを感じさせた。
キミと上がってきた三段の階段の横には、なだらかな手摺りのあるスロープもあった。
そんな気遣いが施されている場所を、ボクは改めてきょろきょろと眺めていた。
館内は、幾重にも本棚が立ち並び、天井から吊るされた表示板には、書籍の分類や館内の案内が書かれてあった。
キミが、ボクの傍で笑っている。
「楽しいにゃん?」
キミは、きちんと公共のマナーを心得てか、少し抑えた声でボクに話し掛けてきた。
「あのカウンターで、利用カードを作って貰うの。こういうの」
キミは、バッグから利用カードを出して、ボクに見せてくれた。
まだ場に馴染めていないボクを キミが誘導してくれる。正直、キミのことを世間知らずのお嬢さんのように感じていたボクは、見方を改めなくてはいけないと思った。

ボクは、カウンターで用紙に必要事項を記入し渡した。ボクよりも少し年上だろう窓口のお姉さんが、利用要項の説明を物腰の柔らかな言葉と笑顔でしてくれた。
「では、こちらがご利用カードとなります。ありがとうございました」
ボクは、手続きを済ませ、本棚の方へと足を向けた。
背中に 突っつくキミの指先を感じた。
「何?」振り返り見たキミの頬には不満と書かれているようだ。もしかして 妬きもち?
その答えは、すぐにキミの言葉に出てきた。
「綺麗な人だね。落ち着いていて大人の女性って感じ…だね」
そうだね、と肯定するべきかとボクは、考える。でも、キミの妬きもちなんて珍しいことのほうがボクには嬉しかった。
作品名:図書館 作家名:甜茶