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フェリオス年代記996

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間に合わない・・・早すぎる・・・すぐ怒るベル、笑っているベル、面白いベル、そして友達として?大好きないろんな表情のベルティーナが脳裏をよぎる。
「ベルティーナぁぁあ!!」イヴァンは必死に剣士の後に追いすがろうとする。
もっと自分が強ければ・・・もっと早ければ・・・・・間に合うのに、たすけられるのにっ!!


そう思った瞬間、イヴァンは加速し、剣士のすぐ後ろにまで迫っていた。
間に合う!?


イヴァンは剣を右下から切り上げ剣士の武器を持った右手をすばやく切り落とすと返す刃で首を跳ね飛ばす。
それを見たベルティーナは意思のなくなった剣士の体をひょいと右にかわすと、その後ろで剣士は崩れ落ちるように倒れこんだ。
イヴァンは少しの間呆然としていた。自分はなぜ剣士に追いついたのか?と。
イヴァンがふとわれに返るとベルティーナはまじまじとイヴァンの顔を眺めていたがイヴァンがその視線に気がつくと、思い出したように剣士の背中に突き刺さったままの剣を引き抜きに行った。
歩兵科たちが相手にしている剣士も前後左右から切り刻まれているがまだまだ勝負はつきそうにない。
「イヴァン!歩兵達に加勢するわよ!」とそのままイヴァンとベルティーナは歩兵達の元に向かう。
そのころルイーザと長身の男もまた激しく剣をかわしていた。
双方とも血まみれの剣士よりも数段上の剣の使い手であるように見える。
そしてお互いまったくの互角でこのままだといつ勝負がつくか計りかねた。が、長身の男はイヴァン達をみると少し距離をとる。
「おー、一匹倒しやがったか。それになんかめんどくさそうなやつがいやがるな…嬢ちゃんのか?」
「……ここであなたもおわりよ!」とルイーザは下段から鋭く切り上げるが長身の男は大きく後方に飛びさらに距離をとった。
「お嬢ちゃんよ勝負はお預けだ。俺も死んで戻るつもりだったがヴァルキュリアの嬢ちゃんに殺されて戻っちまったらみんなの笑いものにされちまう。必ず殺してやるから覚悟しときなよ!」そういうと背をみせイヴァン達の馬の方にむかう。
ルイーザも追いすがるが間一髪で馬に飛び乗り逃げ去ってしまった。イヴァンとベルティーナは歩兵科の加勢に入って剣士を滅多切りにするのに夢中になっており馬どころではなかったが、ルイーザがやってきて剣士の首を跳ね飛ばし、一息ついた後イヴァンは気がついた。
「ちょ、俺の馬がいねえ!!」
「申し訳ありません。死神が乗っていってしまいました」
「なにーーー!!」
イヴァンはその場にすでにへたり込んでいたが、さらにがっくりと肩を落とす。
そのよこにすわっていたベルティーナはしょうがないわね・・・と言いたげな顔で言う。 「父上に頼んで馬を一頭上げるからおちこまないの!」
「マジ?」
「マジ」
「うおおお!ありがとうベルティーナ!どうしようかと思ったよ!」
イヴァンはベルティーナの手を握り何度も何度も振っていた。
「あ、それとさっきなんか言いかけたろ?なんて言うつもりだったんだ?」
「ん、いつのはなしですの?」
「最初の剣士とたたかってるとき」
「ああ!思い出しましたけど、もういいですわ」
ベルティーナはそう言うといかにもつかれたという感じでそのばにコロンとねころがり薄く積もった雪に長い赤毛が広がる。
それをみたイヴァンやきずだらけの歩兵達もおなじくその場にねころんだ。
雪の冷たさが心地いい。まわりに目をやると死体や首が転がっているのだが、今はもうどうでもいい。
今日は疲れたよ、本当に。
「戻ったらラファエーレはただじゃおきませんわ!!」
ベルティーナの怒りのこもった声が聞こえてきた。歩兵科の4人もそれを聞いたのか、わははと笑っているようだ。
イヴァンは思った。とりあえずだれも死ななくてよかったよ。と、だが口に出した言葉はそれとはちがっていた。
「あーもう動けねー、いまおそわれたら死ぬなー」

そして、気がつくとルイーザはどこにもいなくなっていた。

冬季行軍演習バッドエンドエピローグ

だがイヴァンたちはルイーザのことばかり構ってはいられなかった。 そしておそらく探しても見つからないだろうと6人は結論付け、疲れがある程度とれたところで修道院の内部におっかなびっくりと入って行く。
  そこには修道士達の死体と、ひどく傷ついた10体ほどの死体が転がっていた。
ひどく傷ついた死体は通常であれば10回は軽く死ねるほどの傷を負っており、10体のうち半分は首がなかった・・・この10体はさきほどたたかった血まみれの剣士と同じ類の輩であろうか?
そう広くもない修道院内部を隅々まで見て回ったが生存者は一人もいない事を確認するとベルティーナたちは村にもどっていった。
翌日の午後にはミケーレは50人ほどの警備隊をつれて戻ってきたが、ルイーザがいなくなっていることにひどくショックを受け愕然としていると、イヴァンは気の毒に思い、オルシュティン教会神学校女子部の生徒らしいとおしえてやるとまたあえるかも!と元気を取り戻す。
  ベルティーナは警備隊に全てを話した後、警備隊の隊長から協力要請があり、王都の騎士隊が到着するまでの警備協力と村の片付けを手伝うことになったのだった。
さらに2日後、あらかた村が片付いたころに騎士隊の騎士10名が到着し、まず警備隊の隊長に事情を聞いている。
その中によく見知った顔のものがいた。
「いよう、お前ら大変だったな」
ベルティーナらに向かって大柄な騎士が声をかける。
「お、先生!」
「まったくですわ」
彼はフォルトゥナート=デルネーリ、王立兵学校の戦闘技術指導教官である。茶色い髪を短くそろえ屈強な体格をもつ大男で、生徒からの信頼も厚い。
さらにおそらく彼であればあのルイーザと戦っていた長身の男とも渡り合えるのではないかと思えるほどの強豪でもある。
「さて、帰りながら詳しい話を聞くとして、早く帰り支度をしろ」
「え?」
「今から行軍ルートに戻っても間に合わんし、今回は片付けなんかで大変だったろう。行軍演習は終了だ。よくやった」
それを聞いた歩兵科の連中がやったーと大喜びをして騒ぎ出す。それもそのはずで今から戻れば他の隊が戻るまでおよそ一週間は学校はお休みのはず。
ゆっくりのんびりとすごせるのだ。イヴァン達も例外ではなく顔を見合わせ笑顔をみせあう。
「どうした?帰りたくないならいいんだぞ!行軍演習続けても」
はっとした表情をしたベルティーナはジルベルト君のほうをみて指示を下す。
「ジルベルト君!オフェーリアちゃんと手分けして撤収準備開始!10分後に出発よ!!」
「アイアイマム!」
「えっ、えーっ!は、はいっ!!」
と副官ふたりは大急ぎで準備にとりかかる。
「さて、帰りは俺が指揮を執る。せっかくだから体を鍛えながら帰るとしようじゃないか!!」
「・・・・・・」活気付いていた小隊員の顔から血の気がうせていく。
「行軍演習続けた方がよくないか?」とざわめいていたが、すでにベルティーナの指揮権が取り上げられている為手遅れであり、この件をこれ以上話し合うのは不毛であった。