フェリオス年代記996
ましておそらく敵であろう者達の武勇伝を聞いた後ではなおさらであった。
「わが王国はすでに王都周辺に動員令をだして3千人規模の部隊編成に取り掛かかり、賊の捜索および討伐準備をはじめている。くにざかいは隣国を刺激しないよう動員令こそ出してはいないが元々兵数は十分なので国境封鎖は問題は無い。そこで我々は港町ヴァローニュへ向かいフォッジアス王国海軍と協力し港湾警備任務に就く事になった。私以外の教師が今日出払っているのは王都で会議に出席していたからなのだが、先ほど連絡があり兵学校全部隊を呼び戻しに行った。合流地点はヴァローニュ。合流後も警備という任務上、大隊編成は行なわず司令部隊一個、騎士隊一個、小隊十個の混成小隊編成で任務に就き、教師は全員が司令部任務につく事になるだろう。ここまでで何か質問のあるものはいるか?」
そこでベルティーナが挙手する。
「言って見ろ。」とベネディクティス先生が発言をうながす。
「もし合流地点にたどり着く前に、賊と出会ったり賊の痕跡を見つけたらどうすればよろしいんですの?」
ベネディクティスは目を細め厳しい表情で答えた。
「賊の痕跡を見つけても合流が最優先だ。捜索などしなくていい。賊と出会ったなら撤退する。撤退時はわたしと騎士科がしんがりに付く。何が起ころうとヴァローニュに無事にたどり着くのが最優先事項だ。」
「わかりましたわ。」
問題発言を聞いた騎士科のイヴァンとミケーレは賊と会いませんようにと心の底から神に祈った。
「さて、他に質問のある者は?いないなら出発する。」
ベネディクティス先生はそう言ってしばらく待ってからベルティーナに声をかけた。
「出発する。」
それを聞いたベルティーナは右腕を上げ「出発!」の号令とともに腕を前に振り下ろす。
目指すは港町ヴァローニュへ、フォッジアス王立兵学校混成第4小隊はゆっくりと進み始めた。
作品名:フェリオス年代記996 作家名:siroinutan