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神飛行機

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 元日の朝のため、都市にあるその大きな神社は、初詣で大変賑わっていた。参拝客からはさい銭が放たれ、屋台からは食欲を誘ういい匂いが放たれていた。道中におかれている松明の炎は、まだ消されておらず、冬の冷たい風や参拝客から発せられる空気の流れによって、常に揺れていた。草木の繁みの中にいた鶏などの鳥類には、正月など関係無く、いつもより多い人類に混乱しているだけであった。
 参拝客は、クソ寒い中、自分の願い事を八百万の神々に陳情するために来ており、『溺れる者は藁をもつかむ』ということわざを連想させる光景だ……。

「いくら入れる?」
「思い切って、1万円札を入れちゃうぜ!」
「……豪勢だねぇ」
「そりゃあ、就活についてお願いするんだから」
参拝客の2人の男子大学生が、参拝の列に並びながら言った。片方の学生の手には100円玉があり、もう片方の学生の手には1万円札があった。その2人の学生は、大学3年生で、もうすぐクソくらえな就活が始まるのだった……。
「まだかなり時間がかかりそうだな」
「美味しそうな屋台があったから、早く食べたいんだよ!」
参拝の行列は、有名な遊園地のアトラクションぐらいの長さがあり、警備員が誘導していた。2人の学生は、行列のちょうど中間当たりにいた。
「あと、30分ぐらいかかるんじゃないか?」
「朝飯抜いてきたから、そんなに待てないよ! ……そうだ!」
すると、1万円札の学生は、その1万円札を折り始めた。100円玉の学生は、「また馬鹿なことを始めたな」という顔でそれを見ていた……。

「じゃーん!!!」

 1万円札は紙飛行機になっていた……。それを折った学生は、得意気に100円玉の学生に見せつけていたが、苦笑いで返されていた。
「まさか、それをあそこのさい銭スペースに投げこむつもりか?」
「そうだよ! じゃなきゃ、こんなもの折らないよ!」
当然だが、1万円札の紙飛行機を飛ばして、特設のさい銭スペースの中に着陸させるつもりらしい……。
「少し距離があるが、大丈夫か?」
さい銭スペースまではそう遠くなかったが、紙飛行機が届く距離かどうかは微妙だった。
「きっと大丈夫さ! それっ!」
1万円札の紙飛行機は、自信満々の声とともに、学生から飛び放った。

 紙飛行機は、願い事を持った参拝客の頭上を悠々と飛んでゆく。そして、さい銭スペースの近くで、急降下して落ちていった。2人の学生の目には、さい銭スペースに着陸できたように見えた。

「たぶん、入ったな」
「うまくいった! うまくいった!」
紙飛行機を飛ばした学生は嬉しそうにそう言った後、手を合わせ、
「就活がうまくいきますように!」
{うまくいかなかったら、炭にしてやるからな!!!}
心の中で脅しながら、そう願いを告げた……。そして、すぐに行列から抜け出すと、
「屋台で食べ歩いているから、また後でな!」
まだ並んでいる学生にそう告げ、屋台が並んでいるほうへ走っていった……。

作品名:神飛行機 作家名:やまさん