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土曜日の午前の十時を回った頃、玄関のチャイムが鳴った。
今日は、久し振りにキミが来るはずなのに 誰なんだろう、こんな日に来るヤツはと、少々不機嫌に呟きながら玄関へと向かうボクが居る。

ドアスコープは、くもっていて覗いても仕方ない。「はい、どなたぁ」と隙間を開けた。
その隙間から 顔を覗かせたのは笑顔のキミだった。
「おはよう。あれ、ちょっと寝不足?」
「いやぁ。でもチャイムなんて鳴らすから誰かと思った。鍵を失くしちゃった?」
「持ってるよ、ほら」
キミは、バッグの中からボクと自分の部屋の鍵がついたキーホルダーを取り出し、振ってみせた。付いていた小さな鈴が、案外大きな音を響かせた。
「面倒だったの?」
「ううん、違う…です。いらっしゃいってお迎えして欲しかったのです」
「そ、いらっしゃい」
ボクは、少し意地悪く背を向けた。そうしないとボクはいきなり抱きしめてしまうかもしれないなんてことを考えていた。
ボクのシャツの背中をキミが引っ張った。にやけた顔を平常に戻しながら振り向くと、キミは、三和土<たたき>から段差のある上がり口にいるボクを見上げていた。
ボクよりも背の低いキミが、めいっぱい背伸びして、顎を突き出してみせた。
ボクは、キミの要求をすぐにわかったけれど、もう少し この可愛い表情を見つめていたかった。次なるキミの訴えは、瞼を閉じてみせた。瞼の上にほんのりのせたアイシャドウが、きらりと光った。(お化粧もしてきたんだね)キミの桃色の唇を邪魔しないほどの口紅も、ボクの目には、綺麗で崩せないものに見えた。
だけど、その唇が、僅かに歪んだ。閉じた瞼が開き、見つめるボクが映りこむほど澄んで見えた。
「魅力ない?」
キミと見つめ合うだけで想いが伝わっていくようだった。
ボクは、引きつけられるようにキミの唇に触れるだけのキスをした。
作品名: 作家名:甜茶