小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

養蜂場のおじさんとプーサン

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
『養蜂場のおじさんとプーサン』

作:黒木 泪


登場人物

おじさん
プーサン
女神
通行人
蜂×3(声のみ)


所要時間 約20分?


 よく晴れた日の昼下がり。
 一人の男が養蜂場でせっせと働いている。

お「あぁ~今日は良い天気だ。最近は気温も上がってきて花も開いてきた。ワシの可愛いミツバチたちが花の蜜をチュンチュンと集めるには絶好の日だ。この○○養蜂場から、皆さんに美味しい蜂蜜をお届けできるのがワシのこの上ない喜びじゃ。さぁさぁミツバチたちや、おいしい花の蜜を集めてきておくれ」
蜂「ったく。しょうがねえなー」(声のみ)
蜂「行ってきてやんよ」(声のみ)
蜂「後で砂糖水おごれよな」(声のみ)

 蜂たちの飛び去る音がする。

お「ミツバチにも言葉遣いを教えんといかんなあ。おっとそれより蜂箱の様子はどうかな~」

 おじさんは蜂箱を開けて蜜の採れ具合をチェックする。

お「うんうん、良い感じに蜂蜜が溜まっとる。明日の朝には皆を呼んで採蜜できそうじゃわい。おっ今日はエサやりの日じゃった。すっかり忘れとった。育てる用の蜂はあっちじゃったな」

 おじさんは蜂箱を元に戻し、その場を後にする。
 すると、反対側から熊がやって来る。どうやらお腹を空かせているようである。

プ「ぐぅ~、ぐぅ~、ぐぅ~」

 そして熊はどすんと座り込んだ。

プ「はぁ~お腹すいたクマ。ちょっと探検に来たつもりがこんな見たことない所まで来てしまうなんて。はぁ~ついてないクマ。お腹すいてもう一歩も動けないクマ~。ん?クンクン、クンクン。なにか良いニオイがするクマ。クンクン、クンクン。これは………人肉だクマー!」

 熊が叫ぶのと同時に通行人が現れる。

通「わっ!何で熊がいんのー!?」

 熊が襲おうとするが、通行人に逃げられてしまう。

プ「はぁ、もう人を襲う体力も残ってないクマ。ん?この甘いニオイは?」

 熊がのろのろと蜂箱に近付き蓋を開く。

プ「蜂蜜だクマ!うわっ、おいしそう。まさに天からの恵み」

 熊は蜂蜜を一口舐める。

プ「うまっ!こんなおいしい蜂蜜食べたことないクマ!」

 熊は一気に蜂蜜を全部平らげてしまう。

プ「ふあー食べた食べた。食べ終わったらなにか眠たくなってきたクマ。おやすみなクマ」

 熊は横になって眠ってしまった。
 そこに、おじさんが戻って来る。

お「はー、やっぱり蜂は可愛いなぁ。見てると仕事にも精が出るってもんじゃ。ワシ将来蜂と結婚する。なーんちゃって、はぁっ!!??」

 おじさんは蜂箱の異変に気付く。

お「ないっ!ないっ、ないないないない!蜂蜜がない!そんなせっかく蜂たちが集めた美味しい蜂蜜が…。誰じゃ?誰が食べたんじゃ!?許さんぞワシは!」
プ「ぐー、ぐー、ぐー」
お「何じゃこの音は?いびきか?」
プ「ムニャムニャ、もう食べられないクマ」

 おじさんは熊に気付いた。


お「熊!?何でこんな所に熊がおるんじゃ!?おい起きろ。早く起きんか」
プ「あと二十分~」
お「ワシはお母さんじゃない!早く起きろ」
プ「ガルルル!」
お「うわぁっ!」

 おじさんは飛び退き、起きた熊と睨み合っている。

プ「気持ち良く寝てたのに。君誰クマ?」
お「ワシはこの養蜂場の主じゃ」
プ「ふーん」
お「蜂蜜食ったのお前じゃろ!弁償しろ」
プ「弁償!?熊なのに?」
お「人でも熊でも、食ったなら払うもんは払ってもらわんとな!それが社会のルールじゃ」
プ「そんな」
お「いいから早く!」
プ「た…食べてないクマ」
お「何じゃと?」
プ「蜂蜜?な、なんのことだか」
お「ほう、とぼける気か?だがワシは聞いたぞ。お前が寝言でもう食べられないと言ってるのを」
プ「それは夢の中の話であって現実とは全く無関係」
お「じゃったらなぜこんな所で寝ておった?」
プ「遭難してしまって」
お「ほう、ドジな熊じゃのう?」
お「ごもっともでクマ」

 おじさんはそっぽを向きながら独り言を始める。

お「この熊が蜂蜜を食べたのは間違いないんじゃ。なんたって口元に蜂蜜がついておった。何かとっちめる方法はないものか」

 熊は慌てて口元をぬぐう。

お「む?お前口の蜂蜜はどうした?」
プ「え?何のことか分からないクマ」

 おじさんはまた独り言を始める。

お「おかしいな。だが指のベタベタは残っとった。あれを調べればきっと分かるはずじゃ」

 熊は慌てて指をしゃぶり尽くす。

お「熊よ。指を調べさせてもらうぞ」
プ「ええ、どうぞ」
お「何じゃこのネトネトは?」
プ「よだれだクマ」
お「うわー何でよだれ?」
プ「指の掃除だクマ」
お「掃除なら手洗い場でしてこい!ったく。そうじゃ!良いこと思いついた!ちょっと待っとれよ、すぐ戻って来る!」

 おじさんはその場を後にする。

プ「ふぅー何とか誤魔化せたクマ。弁償なんてまっぴらだクマ。さっさとおうちへ帰ろう」

 おじさんが蜂蜜の瓶を持ってやって来る。

プ「それ何?」
お「うちで採れた蜂蜜じゃよ。お前がワシの質問に正直に答えたら、この蜂蜜をお前にやろう」
プ「本当に?」

 熊はそっぽを向いて独り言を始める。

プ「すごい欲しい。あのおいしさをもう一度味わえるなんて。でも、あの男何を仕掛けてくるか分からないクマ~。どうしようかな~」
お「要らんのか?」
プ「やります!」
お「即決だな…。よし、質問は三つじゃ。三つ全てに答えたら、この蜂蜜をやろう。正直に答えるんじゃぞ」
プ「オッケー、ウフフフ」
お「なぜローラなのかは分からんがゆくぞ!まずは、お前はどれくらい蜂蜜が好きじゃ?」
プ「もう目の前にあったら食べちゃうぐらい!」
お「ほう、目の前にあれば食べちゃうぐらいとなー」

プ「さらに言えば三日に一度は蜂蜜食べてるし、家族全員蜂蜜大好きクマ。はい、三つ答えたので蜂蜜食べていいクマね」
お「待て待て待て待て。お前が勝手に三つ答えたのであって、ワシは一つしか質問しとらん」
プ「えぇ~ダメェ?」
お「可愛くないわ」
プ「もう」
お「次の質問じゃが、お前がここに来たときには、まだここに蜂蜜はあったか?」
プ「うん、あったクマ」
お「ふんふん、では最後の質問じゃが、実際のところお前は蜂蜜を食べたか?」
プ「まだ食べてないクマ」
お「まだ?」
プ「だって蜂蜜はおじさんの手元にあるクマ」
お「この蜂蜜の話じゃない」
プ「では、約束通りいただきます」
お「待て待て、まだワシは納得しとらん。」
プ「コンティニューされる場合は追加料金が発生いたします」
お「何でゲーム口調なんじゃ!?」
プ「蜂蜜を入れて下さい」
お「いいから話を聞け」
プ「蜂蜜を入れて下さい」
お「だから話を」
プ「蜂蜜を入れて下さい」
お「分かったもういい。蜂蜜はやる。とりあえず話を聞け」

 おじさんは熊に蜂蜜を渡す。熊は遠慮なく食べる。

お「つまりじゃな」
プ「うまいクマ」
お「おっそれはなによりで」
プ「何でこんなにうまいクマか?」
お「それはな、ハチになるべくストレスを与えないようにしていることと、あとはここの環境が良いからじゃ」
プ「ふーん」