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次男の初恋

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我が家の二人息子は小さい時から全く性格が対照的で、長男の英一はおっとりと
マイペース型なのに対し次男の慎二はすることがやんちゃで激しい性格だった。
小学校に入るとそれはますます顕著になり通知表にも英一のは、物静かな子、
もっと積極性が欲しい、などと書かれる事が多かった。対して慎二のは
もう少し落ち着いて、他の子にも優しく接するように、などと書かれていた。
勉強も英一は何も言わずとも宿題などは自分から黙々とやるほうで成績も
いつもクラスでトップ近くにいた。慎二といえば下から数えた方が早い
くらいの所でウロウロしていた。また、二人の体格の違いは決定的だった。
 英一が3年生の時慎二が1年生で入学したが全新入生の中でも後ろから
2番目という背の高さだった。英一はと言えば常に真ん中より前にいた。

 もう直ぐ夏休みと言うある日の午後慎二が泥だらけの格好で帰ってきた。
どうしたのかとしつこく聞いたが滑ったとか転んだとか曖昧な返事に終始した。
ところが2,3日して店に来た馴染みの客で同じクラスの親から意外な
事を聞いたのだった。なんでも昼休み運動場で3年生の悪ガキが兄の英一を
いじめているのを偶然目撃し猛然と突っかかって行って取っ組み合いになった
というのだ。もちろん勝てる相手ではなかったけれど他のものが止めるまで
自分から引くことはなかったという。英一はバツが悪かったのかそのことに
関して何も言わなかったし、私も二人を問い詰めるような事はしなかった。
 3年生の時、午後に慎二の担任から電話があり怪我をしたので直ぐに学校に
迎えに来て欲しいという。びっくりして車で5分位の所の小学校へ行くと
慎二は保健室のベッドに横になっていた。
「どうした」
と聞くと保健師が遊具から落ちたらしいです、手首を骨折しているかも知れません。
それに打撲もあるかも知れないので救急車を呼ぼうかと思ったんですが、どうしても、
お父さんに電話して迎えにきてもらってくれ、と言ってきかないんです、と言った。
「大丈夫か」
と聞くと慎二は薄笑いを浮かべてウン、と頷いた。
とりあえず知り合いの外科に連れて行くことにした。車の中で色々問いた
だしてみるのだが遊具で遊んでいて自分から落ちたと言うばかりであった。
医者は、今度はどうした、などと言いながら診察を始めたがレントゲンを
見ながら「骨折だな、こことここ、こりゃ複雑骨折だ。子供の複雑骨折は
むつかしくてね成長期だから。紹介状を書くから大学病院にいけよ」と言った。
 結局、ギブスが取れるまで1ヶ月半大学病院に通うことなった。その間
折を見て問いただして見るのだが果たして本当に自損の事故だったのか
どうかは今だ持って分からないままだ。また、このようなこともあった。

 ある日学校から帰ると慎二が病院に行くから保険証を出してくれという。
「どこか具合が悪いのか」と聞くと
「ちょっと耳が痛いから」とだけ言った。
それから数日後の夕方、校長と担任と体育教師がぞろぞろと家にやってきた。
何事かとびっくりしていると3人揃って、申し訳ありませんでしたとか、
すみませんでした、とか口々に言いながら頭を下げた。何のことかとポカンと
していると
「えっ、話は聞いていないんですか」と校長は怪訝な顔をした。
話はこうだった。体育の時間にふざけていた慎二に何度か注意したけれど
きかなかったのでついカッとなって手を挙げたとのことだった。
その時は慎二もケロッとしていたし大したことはないと思っていたけど
耳鼻科の医師が診察して鼓膜が破れているのを見て慎二にしつこく問いただし
たところ学校での一件をしゃべったのだという。親には話していないようだけれど
知れると問題になるなもしれないので校医でもある医師はとりあえず学校に
一報をいれたのだった。学校ではすでに私が知っていると思い謝罪に出向いた
という次第のようだった。
教師から見てきっと目に余る態度をとったに違いないと思うので
このことに関して後遺症さえなければ私の方から問題視することはない、と
告げると皆ほっとしたような表情になった。それでも帰り際校長が私を少し
離れた場所に呼び2つに折った封筒を握らせようとした。明らかに封筒の中には
数枚の札が入っているのが想像できたので、その心配はいらないと固辞した。
作品名:次男の初恋 作家名:mito