before Today.
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僕は今までと同じようにドアを開けた。耳を澄ませば、聞こえてくる小さな呼吸音。僕はほっと息をついて、姉の隣に座った。声を掛けても返事はない。寝ているのだろうと、その時は思っていた。
机の上に置いてあるオルゴールに気が付いた。僕が、姉と出会った頃に少しだけ見た記憶がある。ネジを回してその音を聴くと、安心するような、胸の奥をかき回されるような、不思議な感覚がした。
もう一度、姉に目をやる。ほんの少し、口の端が上がっているように思えた。
作品名:before Today. 作家名:さと