before Today.
いつものようにそれをひっくり返す。
落ち行く砂の音に、世界中の音は吸い込まれていく。窓から見える木の葉も、廊下を行き交う白い人たちも、時計の針も一瞬にして固まった。
また、今日は昨日になり、繰り上がりの計算のように明日は今日になる。しょうがないなあ、と明日が今日という椅子に腰掛けるのが見える。やめてよ、そこは私の席なのに。
砂が上から下に落ちるまで。それが私だけの世界だった。
さようなら、今日。
これまでと同じ様に胸の中で挨拶をする。そして今日は、加えてもう二つにもさよならを言った。
さて、まだかな。スライド式のドアに焦点を合わせようとしたが、やけに時間が掛かった。
深く息を吸うと、肺胞一つ一つの軋みが聞こえてくるようだ。
耳が沈黙に耐えきれず叫び始める頃、唐突に静寂は途切れた。
ドアの方にゆっくりと首を回す。
「来てくれると思ってたよ」
昔のように、笑えているだろうか。
落ち行く砂の音に、世界中の音は吸い込まれていく。窓から見える木の葉も、廊下を行き交う白い人たちも、時計の針も一瞬にして固まった。
また、今日は昨日になり、繰り上がりの計算のように明日は今日になる。しょうがないなあ、と明日が今日という椅子に腰掛けるのが見える。やめてよ、そこは私の席なのに。
砂が上から下に落ちるまで。それが私だけの世界だった。
さようなら、今日。
これまでと同じ様に胸の中で挨拶をする。そして今日は、加えてもう二つにもさよならを言った。
さて、まだかな。スライド式のドアに焦点を合わせようとしたが、やけに時間が掛かった。
深く息を吸うと、肺胞一つ一つの軋みが聞こえてくるようだ。
耳が沈黙に耐えきれず叫び始める頃、唐突に静寂は途切れた。
ドアの方にゆっくりと首を回す。
「来てくれると思ってたよ」
昔のように、笑えているだろうか。
作品名:before Today. 作家名:さと