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D.o.A. ep.44~57

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夕陽が水平線に沈んでいく頃、ようやくそれらしい形になった。


「やっぱ、二人やとはかどったわー。お疲れさーん」
相変わらず正体のわからぬ果実にかぶりつきながら、ジャックは口の周りを汚している。
焚き火がぱちぱちと燃え、たがいの顔に濃い陰影をつくっていた。
もっと煙が出るように工夫したら、少なくとも島内に誰かいれば気付けるのでは、と、揺れる炎を凝視する。

「…もしかしたらな、最初の隠れ家の場所が悪かったんちゃうかって、考えてたんよ」
不意にジャックが、あごに手をあててしゃべり出す。
「獣って、縄張り意識うるさいやん?俺、知らんてる間に、あいつの縄張りに、勝手に隠れ家つくってしもてて…
で、あいつ怒って襲いかかってきたんとちゃうかなあーって」
「あんた、最初の隠れ家は割と早い時期に造ってんだろ、今更そんなコトにはならないんじゃないのか」
「…それもそやな」

反論され、眉をしかめて考えこんでいる。口を動かすことは忘れない。
こればかりは悩んでも仕方のない問題である。けだものの心の機微など、人間に理解できるはずもないのだ。
大体縄張りというなら、この島全体が縄張りなのではないかとさえ思う。
常夏の無人島を支配する獣の王。
王、と呼んで違和感がないほど、あの獣には威厳があった。
だが誇り高い獣の王は、話を聞くところ、ジャックの存在を容認しているようだった。
むしろ、拒まれているのは―――



「ライルくん、明日のために、はよ寝てまお!」
「じゃ、交代で見張りを…」
「ああ、そんなんいらんて。俺こうして無事やし」
最初は怖くて眠れんかったけれど、と、照れくさげにつけ加え、木の葉を敷き詰めたところへごろんと横たわる。
追従すれば、意外に寝心地は悪くない。
ロノアで見たどんな日より、星の多い空に、少し息を呑んだ。
この空を、あと何回見上げるのだろう。

「きっと見つかるよ、キミの友達。…元気、だしや」

眠りの淵にさしかかっているような声が、隣で発せられる。
ほどなくして、派手ないびきを響かせはじめた。
それを、うるさいなと思いつつも、気付けばくすりと微笑んでいた。
「…おもしろい顔」
間の抜けた寝顔を見たら、気が抜けてしまった。
ライルも眠りに身をゆだねようと、目を閉じかけた、まさにその直後。

―――がさり、と。
遠くも近くもない場所で、何かが動いた音に、冷水をかけられた気持ちになった。


作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har