D.o.A. ep.44~57
かちり、と電源をオンにする。
尖った棒にとりつけられた器具が振動し、丸い板がゆっくり赤と青に点滅を繰り返す。
つながれた別の器具が、呼応するようにカリカリと音を立てる。
いくつもの針が波線を満遍なく描き出していた。
最新式のものはどの程度なのか知らないが、レトロなこれはとにかく時間と手間がかかる。
この描き出される複数の線を解読して魔力源の距離、数、移動の有無、方角を導き出す。
今カタカタ反応しているのは海賊団員のものなので、除外しなければならない。
何も反応がなければ波はなく、平坦な直線となる。
つまり、直線から次の反応があれば、リノンがこの島に生きている可能性がある、ということをしめす。
誰もが固唾を呑みながら、その器具を凝視する。
「―――――」
反応は、無かった。
待てど待てど、針が起伏を描くことはなく、時間だけが無為に過ぎていく。
10分ほどは経過しただろうか。
やがて、諦めたように電源が落とされた。
やはり、彼らが計測した、移動する反応の正体は、レオンハートだったのだ。
「こうなったらもう手掛かり無しやな」
「…まあ、この島にはいない、ってのが明確になっただけでも良かったと思いましょうよ」
「そや。万が一置いてけぼりになってたら洒落になりませんからね」
結果に対して各々好き勝手に結論付けつつ、魔道具の片付け作業を始めだした。
その装置が故障している可能性は?とは訊くだけ無意味だろう。
半日あまりで一周できる島に、何の痕跡も残すことなく生き延びているなどありえない。
やはり彼女は、ここではない、どこか別の場所に転移させられたのだ。
「あんちゃん、残念やったな。…でも気ィ落とすなよ。会いたい思てたらいつかは巡り会えるやろ」
なんとも気の長い慰めだったが、一理くらいはある。
ライルの彼女の捜索に傾ける熱意は並大抵ではなかった。
それに、何かの手違いがあったとしても、仮にも大十術師の術が、そう滅茶苦茶に離れ離れの位置に送ることもないはずだ。
ここから一番近い陸地がアルルーナなら、そこで再会する可能性もないわけではない。
「船は、いつ出せる」
「今荷物やら運び込んでるところや。そんなにかからへんやろ」
「そうか」
無表情で素っ気無く踵を返し船室へ入っていく後ろ姿を眺めながら、アントニオ船長は肩をすくめる。
あの少年の仲間であるらしいから、それほど妙な人物ではないだろうとたかを括っていたのだが。
心配なのかと思えば、そんな様子でもなく、何を考えているのかよくわからない。
「…最近の若いモンは扱い辛いわ」
「船長、もうすぐ荷運び終わります!」
進捗の報告を叫ぶ船員に、ん、とうなずいて、太陽を仰ぐ。
「おう。ほな、気合入れていくで。―――目指すは砂の国、アルルーナや!」
作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har