RPG!!
序章 商人と聖剣
青年オーロ・マーチャンターは困惑した。
齢20になる青年オーロは、ごく普通の村生まれ。父親は商店を営んでおり、毎日毎日お金の尊さや、経営とは何ぞやとか、薬剤の調合その他諸々の技術や知識を叩き込まれる日々。
その父親の努力の甲斐あってか、オーロは大商人になることを夢とし、自ら勤しんでこの村のはずれに伸びる河川にやって来た。
理由は簡単、オリジナルの回復薬を調合するため薬草を摘みに来たのである。
今日は気分が乗っていたのか。というか、やる気に満ち溢れていたのか。彼は、河川を北上しすぎて、村の人間も近づかない清流の源である大滝のほとりまで足を伸ばしてしまった。
天気も雲ひとつないし、質の良い薬草も手に入れた。星占いも一等賞。
そんな彼が困惑する訳、それは至ってシンプルだった。
「勇者よ。待っていたぞ。……さぁ、我を抜くが良い。世を混沌に導く闇を共に---」
滝つぼ正面の黒く重厚な岩に、錆びた剣が突き刺さっていたのだ。
いや、それだけならまだしも
「我は光。人はかつて聖剣と呼んだ。遥か昔、我は北国の鍛冶場で生まれそれはもう玉のように可愛い---」
剣がつらつらと喋っているのだ。しかも、流暢に。
身の上話に発展している剣の会話など耳に入ってこない。というか、今、自分のこと「可愛い」と言った。
「あの……」
「その時我を振るったナイスバディの女騎士は……む? なんだ勇者よ?」
「長い。」
剣が語るという非日常も、長話に飽きたのか欠伸を1つ。
少年は、儲け話と金以外には興味が無かった。
「な! 長いだと! こちとら何百年、人を待ったと思っているのだ!」
「知らんわ。俺は薬草、あわよくば果実の樹を確保して、村特産のフルーティーなジュースを売りにしようと算段立ててた。」
「壮大!? 壮大な若者ここにありィィィ!」