僕のチーズバーガー
視界がにじむ。ゴポゴポという音と共に白い泡がいくつも上昇していく。これは一体……?
息苦しさから意識が徐々に覚醒していく。
これは、これは俺の息だ。そう気付くと同時に首に圧倒的な力がかけられている事を知覚する。
誰かに……殺されようとしている……!
そう理解するや否や、自分の首筋に手を伸ばす。何かが指先に触れた。間違い無い、こいつが俺を……!
締められる首、水の中で全てを吐き出してしまいそうな息、そんな中で必死にもがき抵抗する。力を振り絞り、首筋にかけられた何かを己が手で握りしめ、死んでなるものかと力任せに引き剥がした。
「ぷはーーーーっ!!」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
荒い息で水面に顔を出すとそこは、なんてことはない見慣れた浴室だった。
「ふ、風呂?」
風呂で溺れたのか、俺は。なんて情けない。いや、待て。確かに誰かに首を絞められていたはずだ。俺は自分の家の浴室で誰かに沈められていた。だが目の前には誰もいない。狭いワンルームマンションの浴室だ。このタイミングで人が隠れられるわけがない。
夢でも見ていたのか? そう思った時、ふいに背後に気配を感じた。
「ハァ~~~イ!」
頭蓋骨に直接響くような甲高い声のした方を向くと、そこにはハンドボールぐらいの大きさの丸く真っ黒なもやのような塊が中空に浮いていた。
「な……な……」
口をぱくぱくさせながら、目をむいて黒い塊を見ていると、その塊がくるりと回転する。こちらを向いたそれを見た瞬間、今度こそ俺は言葉を完全に失った。
「ナーニオドロイテンノサ?」
振り向いた塊には顔があった。丸い塊の中にぎょろりとした目玉と、ヒヒのような鼻と、歯がびっしり生えそろった大きな口が……。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
今度こそたまらず俺は大声を出した。