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Butterfly Effect

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Butterfly Effect エピローグ



セカイは崩壊しつつある。

*****

 私が願い事を終えてから――灰色蝶が蛍光灯に消えてから――十分後、部屋の扉が開いて、彼が入ってきた。私は、俯いたまま。

 彼の手が触れた。私の肩に。

「百式……ありがとう」

「……山本君」

「いいんだ……これでいいんだよ。きっと……」

 彼は優しかった。

 窓の外。

 積雲が渦を巻き、地平線の端からこちらに向かって、ゆっくりと迫ってくるのが見える。雲は黒々としていて、そこに飲み込まれた存在は、多分……いや、きっと……跡形もなく消滅してしまっているのだろう。

「山本君の事が好き」

 すべて消えてしまう前に、これだけは絶対に言っておかなければならない。そして私はそう言った。

「俺は……百式の事……」

 ごごごご

 セカイの崩壊が迫ってきている。

「百式の事……異性として意識した事なかった」

 私は力なく笑う。

「そう」

 崩壊が加速する。

「でも……こんなにまでして俺の事を想われてしまったら……好きになるしかないだろう?」

 彼の坊主頭が地球に見える。

「俺は……百式の事が好きだ……多分、辻褄は後から合わさって来るさ……俺はきっと……お前の事が好きだったに違いない……自分の心に気づいていなかっただけなんだろう」

 私は、嬉しかった。

「どうして……君は……そんなに、ありえないくらい優しいのかなぁ……」

 私の壊れた涙腺がねじけて、最後の一滴を振り絞った。

 ――キスして……と言いかけて止めた。嘘っぱちの口づけで、セカイを終えるなんてまっぴらだ。

「握手して」

 私はそれを望んだ。少なくとも友情はあったはずだ。

「ああ」

 握手した。

 セカイは終わった。
作品名:Butterfly Effect 作家名:或虎