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灰とリコと導きの歌

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 アンジェリカの言うことはきちんと理解しているようだから、聾ではないのだろう。口が利けないならと紙とペンを渡してみても、首を横に振るのみだった。単に文字を知らないだけかもしれないが、どちらかというと己を説明するという行為そのものを拒否しているように感じられた。
 彼女が何も話さない故、アンジェリカはいまだ彼女の名前すら知らないのである。そんな奇妙な関係のまま、三日が過ぎようとしていた。
 外にあるもの全てを破壊しながら吹き飛ばしてしまいそうに雨風が強かった、あの嵐の夜から。
作品名:灰とリコと導きの歌 作家名:とうた