フイルムのない映画達 ♯01
さんぷん
「こんにちはぁ、『キューピーを三分間でクッキング』のお時間がやってまいりました。先生、今日も宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「じゃあ、早速ですが先生、今日は、どういったお料理をご紹介していただけるのでしょうか?」
「はい、今日は……というか今日もキューピーを使った料理をご紹介いたしたいと思います」
「わぁ、それは楽しみです。では先生、早速お願いします」
「はい、ではこちらを御覧ください」
「先生?これは?」
「キューピーです」
「いつものキューピーと少し違いませんか?」
「そうですか?ちょっとシめるのに手こずってしまって、イマイチ原型を留めていませんが、いつもとおんなじキューピーですよ」
「なるほど」
「こちらのキューピー、髪の毛を毟ってから、肉叩きで入念に叩いて伸ばして、塩コショウを刷り込んであります」
「先生、肉叩きってどんな道具ですか?」
「こちらになります」
「わぁ……鉄のトンカチの頭の部分がギザギザになったような道具ですねぇ」
「そうですね、見た目はほとんどトンカチそのものですねぇ、使い方も同じようなものでして、これで叩くとお肉が柔らかくなってとても口当たりが良くなんです。ちょっとやってみましょう」
とんとん
「ピギャ!」
………
「先生……今の声は?」
「……しまった、シめ方が甘かったかしら?」
「え?このキューピーひょっとして」
「まだ、生きてますね……でも後2分しかないのでこのまま続けます」
「え?」
「では、こちらの予め下拵えしておいたキューピーの上にお野菜を並べていきますよー、まずはレタスを……」
…………
「はい、こういった感じで放射状に並べましょう」
「わぁ先生、お花みたいで綺麗です……あ、崩れちゃいましたね……なんか、キューピーがピクピク動いているみたいですけど」
「こういった場合には、先ほどの肉叩きを使用致します……セイッ」
「え?先生?!」
「…………はい、これで静かになりましたね。もう一度レタスを並べますよぉ……盛りつけって、お料理のとても大事なポイントですからねぇ、丁寧に美しく並べてくださいねぇ」
「先生が、いつもおっしゃてる事ですねぇ」
「ピギーー」
………
「先生……まだ声が…」
「続けます。そして、残りのお野菜も……はい、こんな風に豪華に盛り付けちゃいますねぇ。そしてぇ……あ、そちらのおボール取っていただける?」
「はい、先生どうぞ」
「ありがとう、こちのボールに入っているお肉は、オリーブオイルとバルサミコ酢で、マリネしておいたマグロです。これを……こやってぇ……キュピーのお腹の上に並べちゃいます」
「わ、本当にお花みたいになっちゃいましたねぇ」
「そうですね、放射状に並べられたレタスの内側に色取りの旬のお野菜、そして短冊状にカットした真っ赤なお肉、マグロのマリネをくるくるっと盛り付けてみましたよぉ」
「ピギーーー」
…………
「せ、先生、また声が」
「肉叩き」
「え?」
「さっきの肉叩きを頂戴」
「え、あ、はい……これですか?」
「ありがと……・セイッ」
「ピギャ」
「セイッ」
「ピーー」
「セイセイッ!」
「ギャーーーース」
・・………
「あ……はいっ!これで完成でーす……どうしました?」
「いや……すいません飛んできた血が目に入っちゃって……はい、もう大丈夫です。先生、こちらの料理のお名前のほうお願いします」
「はい、本日の料理は、採れ採れキューピーの女体盛り風マグロのサラダでしたぁ」
「……先生ありがとうございました。ではまた明日」
作品名:フイルムのない映画達 ♯01 作家名:或虎