フイルムのない映画達 ♯01
ぶっかけぇ
「おい、てめぇ!ぶっかけられたいのか?」
「え?」
制服姿の女子校生化粧が崩れるほど戸惑う。
「てめぇ、調子くれてんじゃなねぇぞコラ!ぶっかけられてぇのかぁ?あぁん?」
女子校生は当惑した。絡まれる心あたりがないのだ。
「肩・・・ぶつかっちゃいましたかね?」
「あぁん?」
「・・・目が合っちゃいましたか?」
「あぁん?」
いや、ぶつかりもしてないし、目も合っていない。何より後ろからいきなり怒号を浴びせられたのだから・・・
「そーゆーことじゃねぇだろがニャロメぇ!ぶっかけられてぇのかと言ってるんだ!」
「嫌です!止めてください!」
即答した。
「てめぇ、嫌って言う割にはぶっかけて欲しそうな顔してやがるじゃねぇか」
・・・・
「ぶっかけ顔だな!てめぇは」
・・・ワタシ今、失礼な事を言われているのだろうか?
「よーし、じゃあ、お望みどおりぶっかけてやる!」
「何何何何何何ぃいいいい?やだー、やめてーーー」
「そぉうらぁ」
掛け声と共に男は、手に提げた岡持ちから丼鉢を取り出すと、女子高生の頭にうどんをぶっかけた。
「きゃぁぁぁあああああ」
女子高生は恐怖のあまりその場にへたり込んだ。頭には丼がすっぽり嵌めこまれている。垂れ下がる麺。流れ落ちる汁。男はその様子をみて呼吸を乱した。麺がきしめんタイプであることからも男の異状な心理状態を伺い知ることができる。
「やべぇ、人が来た」
悲鳴を聞きつけて人が集まってきた。男は岡持ちを置き去りに飛ぶように走り去っていった。駆けつけた年配の女性が叫ぶ。
「大変よー!大変!女の子がうどん塗れになってるわー。誰か来てちょうだーい!」
・・・という事案が続発しているとかしていないとか・・・
作品名:フイルムのない映画達 ♯01 作家名:或虎