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何度でも、あなたに恋をする~後宮悲歌~【完全版】

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―まだ花のついているものは部屋に持って帰って、水に挿してみるわ。もしかしたら、まだ何日かは眼を愉しませてくれるかもしれないし。
―持って帰って活けるというのか、この花を。
 ユンが抱えていた桜草の花束はぶつかった衝撃で、花が駄目になってしまったものもあった。そんな花たちを明姫は一本一本、大切そうに拾い上げて言った。
 思えば、あの瞬間、彼は恋に落ちたのだろう。この上なく優しい心を持った彼女に。あれから気の遠くなるような星霜を経ても、あれほどの女に出逢えることは二度となかった。
 時は流れても、彼の記憶の中で少女と過ごした短くも幸福な日々は永遠に色褪せることなく存在している。
 年老いた王は、心の中で亡き少女に呼びかける。
 そなたの申したとおり、そなたがいなくなっても、私はいつでも側にそなたを感じられた。明姫よ。我が愛しい妻よ。
 そなたはいまわの際に言っていたな。何度生まれ変わっても、私にめぐり逢うと。ならば、私もそなたに出逢うために何度でも生まれ変わり、そなたを探し出そう。
 老王の皺に埋もれた眼から、ひとすじの涙が流れ落ちる。
「そなたと共に生きたかった。気の遠くなるような長い年月を共に歩み、美しいそなたの顔に皺ができるまで、一緒にいたかった」
 彼の中で少女は永遠に刻を止めている。彼が生涯にただ一人、心から愛した桜草のような少女。
―妃よ、私はもう老いた。そなたのおらぬこの世で、それでも何とか今日まで生き存えてきたのは、そなたの今わの際の?聖君になれ?との言葉があったからだ。しかし、私ももう疲れたよ。王位も息子に譲った。そろそろ、そなたの許に行っても良い頃合いだろう?
 桜草を思わせる可憐な少女がふわりと彼に微笑みかける。その姿は彼が彼女と出逢った十五歳のときのままだ。
 偉大なる王は七十一年の生涯でただ一人、生涯の想い人と思い定めた少女の面影を瞼に描き、そっと眼を閉じた。
 この二年後、朝鮮中の民から慕われ、不世出の聖君と讃えられた直宗大王は崩御する。

 
 和嬪蘇氏について、歴史は語る。彼女は妊娠九ヶ月で難産が元で亡くなったことになっているが、一説には直宗の母順応大妃の陰謀によって毒殺されたともいわれる。
 また、正史である?朝鮮王朝史?の記録には直宗との間に二人の子を儲けたと記載されているが、一歳で儚く亡くなった静献世子の他にも、側室となってまもなく身籠もり、流刑先の観玉寺にて四ヶ月で流産した第一子がいると記している歴史書もある。
 しかし、正史に名が記載され、その存在が確認されるのは静献世子、及び妊娠九ヶ月でこの世に生まれることなく亡くなった第二子のみである。
                 (完)




 
 
    

 

    



 あとがき

 エメラルドグリーンの眩しい葉桜が美しい季節となりました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
 今年の一月から四月にかけて書き継いできたシリーズ?何度でも、あなたに恋をする?がついに完結しました。三巻めまでは躊躇いもなかったのですが、完結編を書くに当たり、少し迷いが生まれました。
 というのも、当初は完結編の冒頭では、明姫は第一子を懐妊中のところから始めるつもりでした。しかし、一巻から書き継いでくる中に、ここは第二子を懐妊中ということにした方が良いのではという気になりました。
 そこで考えたのが、常道として、時間の流れを正しく追う書き方、つまり第一子を出産したところから書き始めるべきだという想いと、今一つは時間を飛ばして第二子懐妊中から書いた方が良いかという二つのアイデアでした。
 前者の書き方だとすると、当然ながら第一子を出産したことや、その死などは第四話の中では過去形、或いは登場人物の回想として語られることになります。それだと何だか話を随分と端折ったような気がしないでもない。
 しかし、その部分を敢えて、さらりと書くのもまたある意味では効果的なのではという想いもありました。悩んだ末、結果としては回想として描くという手法を選択しました。これをご覧いただいた方でよろしければ、どちらが良かったかを―文芸作品としての観点からでなく、単なる個人の感想としてでも結構ですので―教えて頂ければ幸いです。
 実は、この点については最後まで悩みました。しかしながら、この一つを除けば、ほぼ当初の予定どおりに進んだのではないかと思います。
 なお、これにて私は韓流小説をしばらくお休みして、日本の時代小説に戻るつもりでいます。韓流ドラマにめざめたのがきっかけで、韓流小説を書き始めたわけですが、気がついてみれば、四年近くが経っていました。ここらで日本に作品舞台を戻し、祖国である日本の歴史や日本の時代小説の良さを見直してみたいと考えています。
 その意味で、今回の作品は四年にわたって書き継いできた韓流小説の総まとめになる―一区切りつける意味があると思い、これまで自分が勉強してきたすべてを注ぎ込むつもりで書きました。
 日本を舞台とした時代小説は正直、四年近く書いていません。なので、不安も大きいのですが、初心に返ったつもりでマイペースで取り組んでみようと思います。習作のつもり―笑。
 韓流小説第一号となったのは二〇〇九年十二月に書いた?孫尚宮〜仁誠王后伝?です。設定では、ユンの祖母ということになっている女性です。まだ、内官という名称も知らず、作中では?侍官?という名称を勝手に考えて使っていました。韓流時代劇?妖婦 張嬉嬪?が私に朝鮮王朝時代の扉を開いてくれたのです。この作品はそれを見た直後に書きました。
 日本には戻りますが、また韓国時代小説も書くつもりです。折角少しでも韓国史を勉強したのに、そのままにするのも勿体ないですしね。自分では長らく韓流小説を書いていたつもりでしたが、足かけ五年、正味三年八ヶ月、意外に短かったのだと愕いています。
 そんな短期間に外国人である私が乏しい知識を総動員して書いた小説たちなので、アラも目立つかと思います。ただ言い訳ではないけれど、韓流ドラマでも正直、歴史をほとんど無視した筋書きなのに?歴史ドラマ?と銘打っています。
 日本であれば、これを歴史ドラマと評したら、忽ちにしてバッシングの嵐でしょう。正確には歴史ファンタジーと呼ばれるジャンルに入ります。私の書いてきた作品たちもそういうわけで、歴史ファタンジ―と思って読んで下さいね。
 私は韓国も韓国史も大好きです。特に朝鮮王朝時代には強い関心を寄せています。これからも自分なりに研究していきたいと思っています。
 それでは、皆さま、また、お逢いする日まで。最後はやはり、カムサハムニダ!

             東 めぐみ拝
             

二〇一三年五月吉日
   
  

  




  



  




















 また、本作品は朝鮮王朝時代の韓国をモデルした歴史ファンタジー物語(架空)です。朝鮮王朝時代を参考に描いてはおりますが、あくまでも作者の想像で描いた国が舞台となっていますので、実際の朝鮮王朝時代の韓国と異なる部分もございます。ご理解お願いします。