言の寺
僕は悪代官
「君を手篭めにしたい」
権力にものをいわせて
嫌がる君を無理矢理に
襖の向こうに押し込めて
戦慄く唇
燃える頬
「恥じらいこそが快楽の初め」
僕は帯をギュッと握り
力任せに引っ張る
君はくるくると
布団の上で回転しながら
涙を部屋中に撒き散らす
露わになった肌に露
汗の珠が光つている
「どんな手を使ってでも君を抱きたかったんだ」
分かっておくれ
僕の純情を
君のことが欲しくって欲しくって僕は
政(まつりごと)さえ手につかずに
毎夜独りで藻掻いてたんだ
まさにこの布団の上
行き当たりの天井を眺めながら
その向こうに星を……君を想い描いて
「君のキモチなんて関係ない」
好きなんだ
悪者だっていい
とにかく君が好きなんだ
怯える瞳
うるうると波打つ涙の瀬戸際に
僕はどうしようもない申し訳無さを感じている
だけど僕は
君を抱く
手篭めにしてしまうことで
失ってしまうものがること 分かっている
でもきっと
何か新しい感情が君の中に芽生えるんじゃないかと……
僕は浅ましくも期待しているんだ
お白州に引き出されようと
遊び人風の刺青者に成敗されようと
君が欲しいというこの僕の気持ち
神仏のみぞ知る純情を
君の奥に億ほど届けむ
頑なな君の心をエイと劈き
白き布地に
牡丹描いて