かわいそうだぞう
世の中……イエスノーで割り切れない事が沢山ある。それはタカシにとっても例外ではなかったはずだ。考えてみれば、タカシの選択は、私の質問から導き出されていたわけで、そういう意味では、彼の意思決定の範囲は、私が決めてしまっていた事になる。
「タカシは幸せだったのだろうか……」
最後に書いた文字。
タカシが動かなくなって、私は、外で待機していた獣医さんと、タカシがインドにいた頃の飼育員、シンさんを部屋に招き入れた。
シンさんは言った。
「タカシが書いたんですか」
私は首を縦に振る。
「インドの言葉で、『ありがとう』と書いてありますよ」
それでも私は、タカシが本当に幸せだったのかどうか、未だに分からないでいる。