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白き削除屋(デリーター)

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ルインがみんなに協力を求めようと後ろを振り返った瞬間、全員が我関せずとばかりにそっぽを向いた。
「・・・なんか、『お前一人で考えろ。俺たちゃ知らん』と言いたげだね。ま、仕方ないか。今回ばかりは完全に僕のわがままで危険を招き入れようとしているわけだし、僕ひとりで考えるとしますか。」
なんだかえらく神妙なことを言う。そして顎に手を当て熟考する。
「う〜〜〜〜ん。」
まだ考える。
「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん。」
まだまだ考える。
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。」
それでもなお考える。
そしてついにルインの頭上に豆電球が浮かび、ポンと手のひらを打った。
「よし、白くて小さいから『ホワイトうさぎ』で決定!」
「ちょっと待てぃ。」
思わず無関心を装っていた面々が即座にツッコミを入れた。
「なんだその、もはや名前と形容することもできない名前は?」
「平仮名とカタカナ混同している段階でネーミングセンスを疑うというレベルをはるかに凌駕しています。」
「ルイン、それはこれからこの人が今の名前で呼び続けることを想像したら、とてもじゃないけど耐えられないと思うんだけど。」
己のネーミングセンスに総スカンを受けたルインだが、拗ねたように口をタコにしてぼやいた。
「でもさ、僕にネーミングセンスなんて求めるだけ無駄だし。そこまで言うならもう少しまともな名前なんてあるの?」
「そりゃたくさんあるに決まってるさ。  例えば・・・・
・・・・・
           ・・・・・!!?」
ここで一同我に返った。
(こいつ、まさか!?)
(ボクたちを全員嵌めた!?)
そして見たルインの口元がニィッと上がっていた。


そんなわけで、一部のお人好し組は、この暗殺者の名前を考えることにした。(残りの面々は、ルインの頭から下を地面に埋める作業に没頭していた。)
「・・・しかし、改めて人の名前を考えるとなると、そうそう思い浮かばないものだね。」
レックが眉間に指を当てつつ悩む。
「ほら、僕の言ったとおりでしょ?」
「生首さんは黙っていてください。そもそも、一個人の名前を今ここで僕たちが決めるということ自体非常識なんですから。」
「でもさ、名前なかったら呼びにく・・・」
「生首は黙ってて。まあ、名前がなかったらなんて呼べばいいかわかんないものね。」
「皆してヒドイや・・・」
こぼした涙を拭うこともできぬまま、ルインが涙をこぼしているのを、全員総スカンでやり過ごし、少しの時間が経った。
「・・・フォーゲット。」
と、ハルカがポツリとつぶやいた。
「名前を覚えてらっしゃらないということで、フォーゲットというお名前はどうでしょうか?」
恐らく、この男は名前を忘れているのではなく、隠しているか、本当に名前を持っていないかのどちらかなのだろうが、この際細かいことは気にしない。
「フォーゲットか。うん、いいかもしれないね。」
「そうですね。ですが、それだと少し言いにくいので、少し省略して、フォートという名前でどうでしょうか?」
「おぉ、いいかも。フォート。フォートね。うん、なんかしっくりくる。」
「皆さんはどうですか?」
「うん、いいんじゃないか?」
「なんだろうが構わねぇよ。」
「僕もい」
「これで全員賛成ですね。ではフォートで決定ということでよろしいですか?」
残りの二人も賛成したところで、ツェリライは目の前の男、フォートにそう尋ねた。すると
「お前たちは、一体何を考えている?」
と、反対に尋ね返された。
「何を考えていると聞かれてもね。答えるのが難しいんだけど・・・。一言で言えば、あそこで地面に埋まっているのが家に連れて行くといった以上、ボクたちが反対しようとも強引に連れて行ってしまうんだよ。」
「そうそう、そのおかげで治安部隊に喧嘩を売るようなこともしちゃってるしねぇ。あたしたち。」
「いやぁ、あの時はスリル満点だったよね。」
「・・・それ以上何か言ったら顔も埋めるわよ?」
「やめてください窒息してしまいます。」
今まさに己を手にかけようとしていた危険人物を、表情を変えなかったのがつまらないからという理由で仲間に引き込もうとしている男。
それをある程度の諦観が混じっているとは言え、受け入れている仲間。
そんな集団から、フォートという名を強引に付けられた男は、不可解の海に沈む他なかった。
「わからねぇってツラしてやがるな。」
いつの間にかすぐ横に来ていたグロウが話しかける。
「あの野郎は、自分がこうしてぇ納得いかねぇことがあれば、相手がなんであろうと牙をむく。そういう奴だ。動機を考えるだけ無駄だぞ。」
荒っぽい言い方だが、その顔は面白そうにしている。
「ま、そういうわけだ。てめぇも諦めて腹くくれ。てめぇがまた殺りに来るなら殺り返すまでだ。それに、てめぇらデリーターとやらにも興味がある。」
そう、言いたいことだけを一方的に言い立ててグロウは歩いて行った。

無表情の内に隠された混乱の中、フォートは過去を思い返していた。
今まで己がその手にかけてきた人物は、そのほとんどが腰を抜かし、怯えながら死んでいった。
中には瀕死状態になってもなお立ち向かってくる者。今まさに死の瀬戸際に立っているというのに、愉悦に浸り、笑いながら襲いかかってきた狂人もいた。
だが・・・彼らのような対応をしてきたものなど一人もいない。
己が負けたとき、同時に死を認識した。それが当然のはずだった。
なのにいま自分は殺されていない。それどころか、相手は自分の家に来ることを強制し、周りも結局のところは賛成している。
フォートには、彼らの神経を、まるで理解することができなかった。
しかし、己は彼らに敗北した。そうなった以上は、反目出来る権利はない。
己に残された道は、付き従うことのみ。








たとえその先に、己が身体を己の血で汚す未来が待っていたとしても。