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白き削除屋(デリーター)

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どういうことかというと、背が低いのだ。140センチは、流石にあるだろうが、多分ハルカよりも低い。
その低身長の体を覆うかのように、真っ白なロングコートを羽織っている。
顔はなんというか、びっくりするほど目が細い。あれ、前が見えているのだろうか?そんな場違いな心配をしてしまいそうなほどである。
そして、コートの袖に半分以上隠されている手には異常に大きな拳銃。治安部隊などが使用している拳銃よりも1.5倍程ありそうである。
ともあれ、ルインは気になったことを向こうに黙って立っている暗殺者に問いかける。
「一つ質問してもいいかな?どうしてわざわざ姿を現したのかな。あのまま僕がしびれを切らして動いたところを撃ち抜けば、それで終わりだったと思うんだけど。」
すると、マネキンと錯覚しそうなほど動きがなかった暗殺者の口が動いた。
「  ・・・貴様はあのまま動かず、仲間が帰宅するのを待っていた。違うか?」
図星を刺されてしまった。
「あちゃ、バレてましたか。ただ、今の言い方から察するに、お前の狙いはとりあえず僕だけみたいだね。なら、ここで片付けたほうがいいか。
わざわざこうやって姿も見せてくれたことだし     ね!!!」
ルインはコーヒーメーカーの中身を思い切り相手にぶちまけた。
と同時に、ルインは斜め上に飛び上がる。
コーヒーの狙いは勿論火傷をさせるためではない。ほんの一瞬を作り出すための目くらましにするためだ。相手の得物は拳銃。当然後ろに下がり距離を取るだろう。だからルインは、今相手が立っている位置よりも奥に向かって飛んだ。
しかし、相手はなんと後ろではなく、ルインに向かって真っ直ぐ飛んできたのだ。
「なっ!?」
相手の予想外の行動に、それでもルインは咄嗟に刀を抜き、居合で相手を斬りにかかった。
ガギィィッ!!!
金属と金属がぶつかり合う重い音が鳴る。ルインの刀を止めたのは、相手のあの大きな拳銃だった。
「無駄だ。」
暗殺者は空いている左の拳銃でルインを殴り飛ばした。
「っぶ!!」
思わず距離をとったルインに間髪いれずに弾丸を叩き込んでくる。
「うぉっ!」
咄嗟に飛び退いてかろうじて回避した。
「いや、なるほどね。そのやたらとどでかい銃は、もしもの近接用として使うためのものなわけね。いやまいった。まさか遠近両用の銃とは、どうしようかね。」
無駄口を叩いて少しでも時間を引き伸ばそうとする。だが、それも読まれているのか、暗殺者は再び発砲してきた。
必死でかわすルイン。こうなると圧倒的にルインが不利である。
破断閃のような広範囲技もあるにはあるが、腕の怪我のせいでろくに打てる気がしない。あの時せめて利き手じゃない左腕で防げばよかったと、今更ながら後悔する。
「うぉおお! 死ぬ死ぬ!死んでしまうぅ!」
飛び交う弾丸の嵐を、あるときはソファを、あるときは刀を盾にしてなんとか凌ぐ。だがそんなその場しのぎにも限界がある。
何とかして打開策を講じる必要があるが、そんなもの簡単に浮かぶはずもない。



「暴風投刃(あからしま)!!」
と、奥からクナイが暗殺者に向けられ大量に飛ばされてきた。
相手はこれをかわす。そのおかげで隙が生まれ、その隙を突いてカウルが突撃した。
「買い物済ませて戻ってきてみれば、また随分とえらいことになっているな!?どういうことか、説明してもらおうか!」
その言葉とともに、カウルは暗殺者に拳を叩きつける。だが、相手はひらりと後ろに飛び退ると、そのまま塀を乗り越え、その奥へと姿を消した。
「ふぅ。撃退とまではいかなくても、とりあえず退けられたか。
  あ痛ぅ・・・」
右腕を押さえ込み、うずくまるルインにハルカが駆け寄った。
「ルインさん!ご無事ですか!?」
「うん。まあ腕撃たれただけだし、致命傷ではないから大丈夫だよ。」
ルインがハルカに手当をしてもらっている間、カウルは先程まで乱戦の場とかしていた部屋を調べる。そして、落ちていた弾薬を拾い上げる。
「なんだこの弾薬は?随分と大きいな。 直径は10、いや11ミリはあるか?」
「11ミリの弾丸を発射できる拳銃となると、およそ60口径という意味不明な大きさの拳銃が必要になりますね。」
玄関の方で声がする。声の主はやはりツェリライだった。アコとグロウもいる。
「お、ツェル。グッドタイミングだね。」
「来たタイミングが良かったのではなく、連絡を受けたから来たんですよ。    あそこで見るも無残な姿になっているレックさんにね。」
「え?」
そこでようやく三人は、そういえばレックがいないことに気づいた。そしてツェリライが指差した方向を見ると、さっき家具屋で買ったタンスの下敷きになり、辛うじて携帯を持った手だけがはみ出ている状態のレックがいた。
「あ・・・。」


「いや、済まなかったな。中に入った途端に争っている音がしたと思うやいなや、お前に荷物投げつけてしまった。」
頭をかきかき謝罪する。
「うん、まあ大丈夫。それよりもルインの腕は大丈夫なのかい?さっき聞こえた話だと、そんな超ド級の弾を受けたんだったら、たとえ腕でも大変なことになるよ?」
心配そうなレックをよそに、ルインはハルカに巻いてもらった包帯をした腕を軽く振り上げてみせた。
「ああ、もーまんたいだよ。腕でガードした時に同時にのけぞったからね。直撃じゃなくて、かすった程度で済んだんだよ。直撃だったら今頃僕は隻腕になっていたね。」
唐突に腕を振り上げたものだから、手当続行中だったハルカが慌てた。
「あっ、ルインさん。じっとしていてください。腕を固定できません。」
「おっと失礼。でもせっかくのお気遣い申し訳ないけど、固定はしなくてもいいよ。」
「え?どうしてですか?」
「腕固定したら、刀使えないじゃん。」
「そんな!まだ戦うつもりなんですか!?無理ですよ、そんな腕では・・・」
怪我を負ってもなお戦おうとするルインをハルカは止めようとする。だがルインはハルカの頭に右手をぽんと乗せた。
「ありがとね、心配してくれて。望めるなら僕だってあんなの相手にするのは御免こうむるけど、十中八九向こうからまた来そうだしねえ。ツェリライはどう思う?」
一連の情報を聞いたツェリライは、静かに、はっきりと断言した。
「あなたを襲った暗殺者というのは、おそらく『削除屋(デリーター)』であると判断して間違いないでしょう。」
「デリーター?」
「ええ、数年前から突如出現し、暴力団体や黒い噂の絶えない企業等、世間一般から疎まれている対象を目標に、誰にも知られずに殲滅させている謎の組織です。構成員の人数やその目的、その他全てにおいて謎に包まれています。ただ、一つわかっていることがあります。それは・・・」
「それは?」
「僕が知る限り、これまでのデリーターの暗躍は、一度として失敗をしたことがないということです。」
「それってつまり・・・。」
「目標にされた対象は、必ず殺害されているということです。」
「・・・・・・・。」
室内が重い空気に包まれる。
「やれやれ。じゃあ僕は何としてでもそのデリーターとやらの初の失敗例にならないといけないわけね。」
ため息をつくルイン。なんだかんだいって、プロの殺し屋などに狙われた経験なんてない。