Repeated the wolrd
学校までに上り坂を上りきったところで、やっと無言が解けた。
「前川くん、麻衣ちゃんってどこに通っているの?」
「うちの学園の高等部一年だよ」
「え、一歳も違うだけだったの」
「まあ、あの体型なら中学生に見えるよな」
身長は普通に伸びたと思うのだが、一部の成長が緩やかだから仕方がないのかもしれない。
「間に合った」
といっても、残り五分。
「さくら、少し待っててくれないか。こいつ置いてくるから」
「うん」
さくらの返事を聞くと、俺はすぐに駐輪場に向かった。
その後は、先生に気づかれないように教室まで手を繋いで小走りで向かった。
とても楽しい気持ちに包まれていた。
教室に入ると男子のみなさんは「なんで一緒に登校してんだよ」と文句を述べていた。
俺はすぐに席に着くと、ちょうど大地先生が入ってきた。
「これからホームルームを始めるぞ。まずは、出席だ」
一人一人名前を呼ばれて返事をしていく。
呼び終えると、先生が俺に手招きをするので先生の近くまで行くと、「あとは頼んだ」と言われてしまった。俺はすぐにあれのことだと分かった。
先生はそのまま「ホームルーム終わり!あとは、前川が引き継ぐ」とだけ言って、教室から出で行った。
「それでは、来月中旬に行われる。クラス対抗戦についての作戦会議を始める」
後ろの黒板が反転しディスプレイが出てきた。
いろいろとこの学園は生徒の向上を目的として、いろいろと改造を重ねてきているので、こんなことに驚いてはいられない。
ディスプレイには、作戦会議とだけ表示されている。
「誰を選抜するんだ?」
リンドウが説明を求めるように手を挙げた。
「そうだな。この学園は芸術・運動・学力で競うからな。それに、今回は参加人数が一つに十二人だ。俺を含めてこのクラスは三十六人だからな。決定したら変更は無理と条件付きだ」
「今回ばかりは人選が大事ということだな」
「ああ」
「クラスの総合力を見ての考えがあるんだな?」
桔梗が落ち着いた物腰で分析している。
「だから、俺がいるんだろ」
「わかってるよ」
リンドウはそう言って立ち上がったと思うと、
「我らがクラス代表のために一肌脱ごうじゃないか、お前ら準備はいいか!」
「おおー!」
リンドウの一言で男子の団結力が分かる。
「私たちもいくよ。せーの」
「おおー」
さくらの掛け声で女子が一つに纏まった。
「それじゃ、始めますか」
2
まず、初めに俺たちは偵察を始めた。
偵察と言っても簡単なことだ。
クラスの情報を集めてくるはずなのだが、一人だけなら――
「なんで・・・お前たちも来てんだよ!!」
思わず叫んでしまった。
返事を返すように、各々が。
「楽しそうだから?」
「やってみたかったんだよなー張り込みみたいだし」
「こいつらが行くとなれば、子守する奴が必要だろ」
「そうじゃなくてさ――」
さくら・リンドウ・桔梗が、俺の後ろで臨戦態勢で構えてる。「桔梗、さっきのセリフはどうした?」
二人もその言葉に連れて、振り向く。桔梗の姿は――戦闘服だった。
「今から、攻め込むんじゃなかったのか?」
平然と返すこいつの話し方に、俺は下唇を噛まずにいられなかったはずなのに・・・
「桔梗、これどこで買ったんだよ。すげー」
「桔梗くん、手に持ってんの何?」
「これは、戦争中に使用され――」
リンドウとさくらは興味津々で、俺の話を聞かない。「一人で行くか」と考えながら、偵察するクラスの近くまで来ていた。
「前川!そんな隠れ方だとやられるぞ!!」
後ろを見ると、話に耽っていたはずの桔梗の姿がある?あるよな!?
「お前も姿勢を低くして、目立たないようにしろ」
「目立つだろ!そっちが、目立つから」
今の桔梗の姿は、ほふく姿勢の上に草でできたコートで覆っている。それだと、周りから不思議に思うから――まぁ、そうだよね。不幸って連続で来ることが多いから。
リンドウとさくらが目的のAクラスの人と話している。「Aクラスは何に出るんですか」といつもの口調で聞いている。ええと、それは、と戸惑っているAクラスの生徒に申し訳ないとばかり敬礼をしていた。「何をしている隠れるんだ」もう、桔梗の声なんて聞こえない。幻聴だと思うしかない・今は、あっちが優先だ!
「すみません、変なこと聞いちゃって、言えないもんな」
はははと笑いながら、二人の背を押して何事もないように出て行こうとした。
「ちょっと待て」
後ろから聞こえた。太陽様だ、太陽様とAクラスの生徒が一堂に声をあげて、こちらに注目していた。
「お前ら?ウチのクラスで何してんだ」
向日葵 太陽――この山吹市の旧家の中でスポーツ界に一翼を広げている家柄だ。その名に恥じないほどの運動に優れている。学園で歴史上初の測定不可を出したのだから。
「久しぶりだな、太陽。Aクラスの重役がほっつき歩いていてもいいんですか?」
太陽は委員長補佐という役職に就いている。
「部活のスケットにいってたんだよ」
さすがですねと、感嘆がもれてしまう。「そういえば」と、ずっと方に掛けていたものを投げ出してきた。
「桔梗・・・何してんだ」
「分からん」
「そいつが廊下に寝転んでいたのを気づかないで、踏んじまったんだ。すまん」
あきれた…あきれたあきれたこいつらの行動に嫌気がさしてきた。こいつまだ隠れていたのかよと桔梗を見ていたが、太陽もそうだ!なんで気づかなかったんだよ。
もうわからなくなってきた・・・うん?
さくらが前に出てきた。俺の前で腰のあたりに手を添えていた。
「太陽さん、私達はAクラスがどの種目に出るのかを聞きに来ました」
単刀直入すぎるだろと、口を押えた。何をするんですかとばたばたしているさくらを止めるには時間がかからなかった。
「なんで、お前はいつも直球なんだよ!?もう少し変化かけた感じに聞けないのか?」
「まっすぐのほうが伝わりやすいでしょ」
周りからは呆れたような目線が向けられている。
「悪いが、答えr・・・」
「私たちは、全競技に参加しますわ」
突然、後ろから告げられた言葉に身を硬直させてしまった。
「百合様」
太陽は一言だけそういうと膝を落とし、まるで中世の帰属が王に忠誠を誓うようだった。
しかし、相手は王より女王がふさわしいか。
周りもプリンセス、百合様とかいろいろ言っているのが耳を通り抜けていく。
「あの人が、A組の委員長・百合 智香」
さくらは知っていたようだ。
「非の打ちどころがないと噂の委員長か」
「ウチらの委員長は非の打ちどころもあるのが売りだ」
リンドウ、頼むからやめてくれ。
作品名:Repeated the wolrd 作家名:八神 航平