Repeated the wolrd
そよ風の気持ちいい春―
太陽の光さえ心地良さをも覚えるほどだ。
変わらない街並み、願いを何でも叶えてくれるとうわさの謎の女神像があったりする。
高校二年の春だけあって、もう何度来たかさえ忘れてしまった大木の前に立っている。
大木と言っても何十年もこの丘に寂しくこの町を見渡すかのようにそびえ立つ桜の木だ。
この山吹市の丘には大きな桜の木の下で、
俺、前川 大空(まえかわ そら)は木陰で寝ていた。
この名前はおやじが晴れ渡った空をみて思いついたそうだ。
おかげさまで、痛くて痛くてたまりません。
小学校の時は感じなかったこの気持ちも中学、高校と成長するたびに感じていた。
なぜなら、神様の悪戯なのか、自己紹介といいうものがある。
毎回、周りから痛いよ、痛すぎると名前に対しての手厳しいコメントが返ってくる。
そんな学校生活から抜け出すために、近くの丘に来た。
誰にも邪魔されずに、気持ちよく過ごせるからな。
決まってここで寝ていると夢が見れる。
夢は至って普通だ。
毎回夢の中であったことのない女の子と一緒にいて、最後はその子の名前を聞けずに終わる。
いつもそこでおわりませんようにと、祈りながら寝ているのに聞こえない。
彼女の声を聞きたいと願った―。
「君の名前を教えてほしいんだ」
「わたしの名前は……」
また、夢は終わった。
悲しかった、聞きたかったのに何で聞けないんだよ。
俺は泣いていた。一人桜の木の下で泣いていた。
「どうして、君は泣いてるの?」
えっ……なんで、夢だと思ってたのに……
そこには、夢で見ていた女の子が覗き込むように顔近づけている。
いや、夢だ、夢に違いない。もう一度寝て起きれば覚めるとよく言うからな。
3・2・1……はい、夢でした!
「夢じゃねぇぇぇぇ」
「きゃ、急に大きな声を出さないで、こわいよぉ」
「ご、ごめん」
女の子は、両手で頭を押さえつつ潤んだ瞳でこっちをみてきたので、俺はかわいいと思った。
「前川くん、いつもここでお昼寝してるから、こっそり寝顔を見……」
「寝顔?」
「ち、違うよ。次の授業に遅れないように見にきただけだよ」
全力で否定されると思うと、落ち込むなぁ。
「そっか、ところで俺の名前知ってる?
しかも、同じ学校の女子の制服だし」
「もしかして、気づいてないの」
「いいや、思い出せない」
「はぁ、私は卯月 さくらです。前川くんとは同じ学年で同じクラスなんだよ」
「う〜ん、もしかしてちびっこ委員長!?」
「私、そんなに小さいですか……」
やばっ……踏んではいけないものを踏んでしまった……
「いいですよ、よくちっちゃくて、中学生なんていわれるんで」
俺の目線では、小学生かと……
「今、小学生と思いませんでしたか」
なんで、わかるの?落ち着け!この場を対処するんだ、俺ならやれる。たぶん……
「小さくても需要が利くとかよくいうじゃないか?大丈夫だって、君にだって希望はある」
「なかったら、どうするんですか」
そう来たか……
「仕事に生きればいい!」
「できれば、前川くんといたいです」
聞き間違えだろうか
大声を出したさくらの顔は赤く染まっていたが落ち着きが戻っていた。
これで、やっとまともに話せる。ずっと横になりながら話すのは失礼かなと思っていたことだし…
俺は、気づくのが遅すぎた。なぜ、彼女の顔が覗き込むようになっていたことに……
まずは、深呼吸をして、よし!
「さくらって呼んでいいかな」
「はい」
彼女は嬉しそうにしていた。
「さくらは何でここにきたのかな」
「私はいろいろとありますが、初めて前川くんにあったのもここなんですよ」
「俺、覚えてないよ」
「そうですよね、あの時も気持ちよさそうに寝ていましたから」
なるほど、俺は寝ているときにこんなにかわいい女の子に出逢っていたなんて、最高の出会いを逃していたのかよ。
「ところで、毎日来るの?」
「はい、最近は前川くんの寝言をよく聞きますけど」
えっ……寝言って、まさか!?
「寝言って、どんなこと言ったんだ」
「えっと、君の名前を教えてほしいんだといつもいってましたよ」
恥ずかしい、恥ずかしい。出逢って数分しか経ってない相手に寝言を聞かれた状況が恥ずかしすぎる。
ということは、俺はさくらにずっと名前を聞いていたことになる。
高校の青春がどこかで崩れていく気がした。
「もしかして、毎日授業に遅れないように起こしに来てくれたのかな」
「うん、一応委員長の務めみたいな」
クラスのことをよく見てるんだな。
先ほどからの自分の不自然な体勢に疑問を抱いたので質問してみた。
「ところで、この状況を説明してくれるかな」
「えっ?」
「起こしに来てくれたのはうれしいけど、この体勢はちょっと……」
「……!」
彼女の太ももに俺の頭は乗っている。寝る前までは草の柔らかさに埋めていたはずなのに、彼女のぬくもりをじかに感じていた。
痛っ……
さくらは、急に立ち上がって一歩引いたところに立った。
心地よい風が二人を包んだ。
ピンク?
さくらは、あわててスカートを押さえた。
「み……見た……私の」
「見ていない、絶対見てない、きれいな桜色なんて」
あっ……俺馬鹿だわ。
「前川くんの……えっち」
さくらの頬が桜色に染まって、リスのように口を膨らませた様子がかわいいくて、視線を奪われていた。
「もう前川くんのことなんて、知りませんからね」と言いつつ、振り返って歩き始めたところで、
ふぎゅっ―こけた。
なんで、ラブコメ展開してんの?と思ったが、自然に体が動いていた。
ぎゅっと抱きしめる形で受け止めたのでさくらには怪我はなかったから良かったが焦っていたので、自分が何を掴んでいるのかに気づかなかった。
あわわわわ…
さくらの慌てる声がする。今はっきりとわかる。
一度ではなく、二度さわって分かった。やわらかい、ぬくもりを感じるってことはこいつ……隠れ巨乳だったのか。
身長の割りには発育が良かったってあれだよな。おそらく……
「やっぱり前川くんは、えっちです」
「こ、これは不可抗力だ。わかるよな?」
「それは、わかります。前川くんがそういうことをする人だとは思ってませんから」
俺がもしそういうことをするやつだったら、どんな結末を迎えていたことだろうか。
口に出さずに心の底にでも投げ捨てておこうかな。
予鈴がなっていることに気づいた。
違う。これは、終業のベルの音だった。
さくらは時計を覗きこむと慌てた表情で、こちらを見つめてくるのに、俺自身が桜の手を引っ張って走り出した。
「さくら、これから・・・よろしくな」
振り向きながら、俺は照れくさそうにしている彼女を見ながら、言葉を待った。
「はい!」
彼女の声はやわらかく包み込むものがあった。
これが、俺とさくらの出会い春だった。
忘れない。
きっと彼女と過ごした日々のことを
太陽の光さえ心地良さをも覚えるほどだ。
変わらない街並み、願いを何でも叶えてくれるとうわさの謎の女神像があったりする。
高校二年の春だけあって、もう何度来たかさえ忘れてしまった大木の前に立っている。
大木と言っても何十年もこの丘に寂しくこの町を見渡すかのようにそびえ立つ桜の木だ。
この山吹市の丘には大きな桜の木の下で、
俺、前川 大空(まえかわ そら)は木陰で寝ていた。
この名前はおやじが晴れ渡った空をみて思いついたそうだ。
おかげさまで、痛くて痛くてたまりません。
小学校の時は感じなかったこの気持ちも中学、高校と成長するたびに感じていた。
なぜなら、神様の悪戯なのか、自己紹介といいうものがある。
毎回、周りから痛いよ、痛すぎると名前に対しての手厳しいコメントが返ってくる。
そんな学校生活から抜け出すために、近くの丘に来た。
誰にも邪魔されずに、気持ちよく過ごせるからな。
決まってここで寝ていると夢が見れる。
夢は至って普通だ。
毎回夢の中であったことのない女の子と一緒にいて、最後はその子の名前を聞けずに終わる。
いつもそこでおわりませんようにと、祈りながら寝ているのに聞こえない。
彼女の声を聞きたいと願った―。
「君の名前を教えてほしいんだ」
「わたしの名前は……」
また、夢は終わった。
悲しかった、聞きたかったのに何で聞けないんだよ。
俺は泣いていた。一人桜の木の下で泣いていた。
「どうして、君は泣いてるの?」
えっ……なんで、夢だと思ってたのに……
そこには、夢で見ていた女の子が覗き込むように顔近づけている。
いや、夢だ、夢に違いない。もう一度寝て起きれば覚めるとよく言うからな。
3・2・1……はい、夢でした!
「夢じゃねぇぇぇぇ」
「きゃ、急に大きな声を出さないで、こわいよぉ」
「ご、ごめん」
女の子は、両手で頭を押さえつつ潤んだ瞳でこっちをみてきたので、俺はかわいいと思った。
「前川くん、いつもここでお昼寝してるから、こっそり寝顔を見……」
「寝顔?」
「ち、違うよ。次の授業に遅れないように見にきただけだよ」
全力で否定されると思うと、落ち込むなぁ。
「そっか、ところで俺の名前知ってる?
しかも、同じ学校の女子の制服だし」
「もしかして、気づいてないの」
「いいや、思い出せない」
「はぁ、私は卯月 さくらです。前川くんとは同じ学年で同じクラスなんだよ」
「う〜ん、もしかしてちびっこ委員長!?」
「私、そんなに小さいですか……」
やばっ……踏んではいけないものを踏んでしまった……
「いいですよ、よくちっちゃくて、中学生なんていわれるんで」
俺の目線では、小学生かと……
「今、小学生と思いませんでしたか」
なんで、わかるの?落ち着け!この場を対処するんだ、俺ならやれる。たぶん……
「小さくても需要が利くとかよくいうじゃないか?大丈夫だって、君にだって希望はある」
「なかったら、どうするんですか」
そう来たか……
「仕事に生きればいい!」
「できれば、前川くんといたいです」
聞き間違えだろうか
大声を出したさくらの顔は赤く染まっていたが落ち着きが戻っていた。
これで、やっとまともに話せる。ずっと横になりながら話すのは失礼かなと思っていたことだし…
俺は、気づくのが遅すぎた。なぜ、彼女の顔が覗き込むようになっていたことに……
まずは、深呼吸をして、よし!
「さくらって呼んでいいかな」
「はい」
彼女は嬉しそうにしていた。
「さくらは何でここにきたのかな」
「私はいろいろとありますが、初めて前川くんにあったのもここなんですよ」
「俺、覚えてないよ」
「そうですよね、あの時も気持ちよさそうに寝ていましたから」
なるほど、俺は寝ているときにこんなにかわいい女の子に出逢っていたなんて、最高の出会いを逃していたのかよ。
「ところで、毎日来るの?」
「はい、最近は前川くんの寝言をよく聞きますけど」
えっ……寝言って、まさか!?
「寝言って、どんなこと言ったんだ」
「えっと、君の名前を教えてほしいんだといつもいってましたよ」
恥ずかしい、恥ずかしい。出逢って数分しか経ってない相手に寝言を聞かれた状況が恥ずかしすぎる。
ということは、俺はさくらにずっと名前を聞いていたことになる。
高校の青春がどこかで崩れていく気がした。
「もしかして、毎日授業に遅れないように起こしに来てくれたのかな」
「うん、一応委員長の務めみたいな」
クラスのことをよく見てるんだな。
先ほどからの自分の不自然な体勢に疑問を抱いたので質問してみた。
「ところで、この状況を説明してくれるかな」
「えっ?」
「起こしに来てくれたのはうれしいけど、この体勢はちょっと……」
「……!」
彼女の太ももに俺の頭は乗っている。寝る前までは草の柔らかさに埋めていたはずなのに、彼女のぬくもりをじかに感じていた。
痛っ……
さくらは、急に立ち上がって一歩引いたところに立った。
心地よい風が二人を包んだ。
ピンク?
さくらは、あわててスカートを押さえた。
「み……見た……私の」
「見ていない、絶対見てない、きれいな桜色なんて」
あっ……俺馬鹿だわ。
「前川くんの……えっち」
さくらの頬が桜色に染まって、リスのように口を膨らませた様子がかわいいくて、視線を奪われていた。
「もう前川くんのことなんて、知りませんからね」と言いつつ、振り返って歩き始めたところで、
ふぎゅっ―こけた。
なんで、ラブコメ展開してんの?と思ったが、自然に体が動いていた。
ぎゅっと抱きしめる形で受け止めたのでさくらには怪我はなかったから良かったが焦っていたので、自分が何を掴んでいるのかに気づかなかった。
あわわわわ…
さくらの慌てる声がする。今はっきりとわかる。
一度ではなく、二度さわって分かった。やわらかい、ぬくもりを感じるってことはこいつ……隠れ巨乳だったのか。
身長の割りには発育が良かったってあれだよな。おそらく……
「やっぱり前川くんは、えっちです」
「こ、これは不可抗力だ。わかるよな?」
「それは、わかります。前川くんがそういうことをする人だとは思ってませんから」
俺がもしそういうことをするやつだったら、どんな結末を迎えていたことだろうか。
口に出さずに心の底にでも投げ捨てておこうかな。
予鈴がなっていることに気づいた。
違う。これは、終業のベルの音だった。
さくらは時計を覗きこむと慌てた表情で、こちらを見つめてくるのに、俺自身が桜の手を引っ張って走り出した。
「さくら、これから・・・よろしくな」
振り向きながら、俺は照れくさそうにしている彼女を見ながら、言葉を待った。
「はい!」
彼女の声はやわらかく包み込むものがあった。
これが、俺とさくらの出会い春だった。
忘れない。
きっと彼女と過ごした日々のことを
作品名:Repeated the wolrd 作家名:八神 航平