動物園
『人間』
そう書かれた看板の周りは、多くの親子連れで賑わっている。クリアガラスのような見えない壁で隔てられた、向こう側の空間では、男女が滑稽なやりとりをしている。
「へえ、これが『ひうまん』というやつか。」
「ねえ、パパ。あの『男』の方、さっきからずっと板みたいなのをいじってるけど、あれ何してるの?」
「さあ、パパにもよく分からないな。なにやら、あれをエサに、展示物を集めているという話らしいけどね。」
「ふうん、二人で来てのるに、全然楽しそうじゃないね。」
「『ひうまん』の生態については、分かっていないことが多いらしいからね。もしかしたら、あれが彼らにとっては普通なのかもしれない。」
「……あっ、見て。『女』の方が走ってっちゃった。」
「いやあ、興味深い。実に『珍しい見世物』だった。」
「パパー、もう飽きちゃった。そろそろ帰ろうよ。」
「そうだね。帰りはレストランでも寄ってくか。」
「やったあ、パパ大好き!」
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※この物語はフィクションであり、登場人物など現実と全く関係はありません。