Magic a Load 2
シンの口からの呪文はすっかりと溶け込んでいるようだと隣に露骨に嫌な表情をし左目を横目にちらりとディビットはシンを見た。
暫くするとシンが座っている床に白く描かれている召喚の円が黄色から金色へと光だし淡い白へと光はシンの周りから上へと浮上していく。
その光にはシンはさすがに今まで閉じていた目を見開き同時に声を上げた。
「うおっ!」
ディビットは嫌な表情から眉間に皺いっぱい寄せ慌て声を出す。
「おい、シン、、何処行くんだよ?!」
「は?ディビットお前何言って・・それはこっちの台詞だ。俺だってそれそっくり返してやりたいんだけど?」
ディビットは"は?"と返そうとしたが自分の身体に違和感があった。二人は召喚の上で浮上している。そして二人の身体は次第に透明になっていく。
その光景をバーバラ達が見るとバーバラは慌てて駆け寄り大声でシン達を呼んだ。
「ちょっと、シンとディビット!!・・ちょっとあんたどういうつもりなのよ?!この二人は何もしていないのにそんなすぐに"バットエンド"な訳?!
大体、あなた何者なのよ!胡散臭い"魔術師"の格好なんてしちゃって!その変な白い手袋でシン達を元に戻してよ!」
バーバラは態度は必死だったが声のトーンはとても弱かった。シン達が知っているバーバラは"気の強い女性"or"笑顔が絶えない"という事だけ。
こんな弱いバーバラは初めて見た。ハイスクールの2年生の頃にシンは彼女と付き合っていたがその時でさへもこんな気の弱いバーバラを見てきた事はなかった。
未だにところどころ"気の強い"バーバラは残っているようだが。声には全くそれが感じられなかった。
シンは思わずバーバラを見入った。ディビットはむっとした表情で呆れた声で言った。
「まさか、二度惚れとかしてないだろうな?」
シンはディビットの言葉に鼓動が少しだけ飛び跳ねるのを感じてから笑いを飛ばす。
シンの身体はもうすぐにでも消えそうだが肩を竦めディビットを見た。
「まさか。あんな酷い別れ方させたのに? ってそんな話は今はどうでもいいだろ?!・・」
ディビットはシンの言葉にふんっと冷たく鼻を鳴らしそっぽを向いた。
シンは苦笑を零しながらもまだ気の弱い声でクロウリー師に反発している。しかしクロウリー師は無表情で腕を組んで佇んでいるだけ。
そしてゆっくりとシン達へと視線を向け言葉を投げるように言った。
「二人共!!!互いに手を組みなさい!そして私が言った通りに"元の世界"で"修行"をしてきてもらう!」
「「えっ!!!!」」
シンとディビットが同時に声を上げた瞬間にクロウリー師は"パン"っと両手を叩いた。
バーバラはその光景を目を見開き見た。驚きのあまりに声も失って身動きすらできなかった。
シンとディビットはバーバラ達の前から姿を消したのだった。
その光景をフランシスは口元を緩め深い笑みを浮かばせていた。
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シンとディビットの身体はふっと何処かに現れた。コンクリートに二人共勢い良く尻餅をついてシンはお尻を摩りながら苦痛な声を上げる。
「うがああ、痛てぇよおお!」
ディビットは苦痛を堪えた様子でシンを見つめまたふんと鼻を鳴らし身体を起こすと周囲を見渡す。
するとそこはさっきまで居た場所から移動する前の場所だった。
昼間だというのに壁が真っ黒すぎて光を遮らせている。此処はどうやら・・。
「路地裏か・・・?という事は・・・・」
ディビットが呟けばシンが何かに聞き耳を立てる。パトカーのサイレン音と混ざるのは女の人の乱れた声だった。シンの身体が思わず火照てディビットに手を差し伸べ握れと合図しながらディビットは嫌々ながらもシンの手を握れば起こしてやった。
シンはディビットの手をまだ離してはいなかった。ディビットは勢い良く手を上に振り上げたがシンは離そうとはしない。
むしろシンはディビットにさらに身体を寄せ真剣な表情で見つめた。
ディビットは上外側鼻軟骨の左側をピクッと動かし身を少しだけ引いて視線は横へと向ける。
シンは口の横に手を当てディビットにそっと耳打ちをした。
「どうやらアメリカみたいだな?」
「何でそんな小声なんだよ?・・・パトカーのサイレン音とこんな臭い匂いで"元の世界"だって事ぐらいすぐ分かるだろ?」
ディビットの冷たい口調でまじめすぎる言葉にシンはディビットから手を離し上着ポケットに手を突っ込み口を尖らせながら言った。
「なーんだ、それしかないのかよディジーちゃんはさ?それよか此処で"修行"とかマジありえねぇんだけど。バーバラの言う通りあのおっさんマジ何考えてるんだろうな?
あの召喚の時、マジに何も感じてなかったんだけど。ディジーちゃんはどうだよ?何か感じたか?」
しかしディビットは何も返事を返さなかった。シンが"おい"と声をかけるとディビットの頬は赤くなっていた。シンは頬を染めているディビットの顔を覗き込み手を振った。
「おーい、どうしたんだよ?」
ディビットは声のトーンを落としながらシンにそっと呟く。
「・・・とりあえずいつもの"集いの場"に向かわないか・・・・・?」
こんなディビットはもう二度と見る事はない、と感じた時にシンはディビットが何故こんなに頬を赤く染めているかに気づいた。
路地裏の奥底から響く女性の淫らな声がまたシンの耳に響いてくるとシンは肩を竦めるとディビットの肩を抱き寄せると"集いの場"へと向かい出した_______________
作品名:Magic a Load 2 作家名:悠華