悪魔のための死神業
「じゃあ、最初から言い直させていただきます。そこで居眠りしてる外だけ着飾った花瓶みたいな婆も聞いとけ・・・。名前は八方神 巫。十七歳。日本生まれ。神主の家系でしたが、不自由なかったのは、建物だけ。親からの扱いは奴隷以下。兄弟は、母に殺され虐待もあった。そのあと性同一障害になった。叔父に強姦された。恋人は死んだ。そして・・・。僕も死んだ。十月二十九日。誕生日は十一月一日。」
「おみごとっ。」
「は?」
男は僕にそう言った。続いて・・・。
「まずマリア様に大口叩いたところが良かった。あと、全部合っていたしねぇ。
君は晴れて、僕たちの仲間入りだよ。さぁおいで。」
おいでと、僕は誘われた。が、サタンと思われる男が、地獄からくるような声で叫んだ。
「待て!まだ審査途中だ。」
「ええ。でも連れて行きますよ。」
サタンは、さっきの自己紹介では話していなかったらしく、自己紹介も兼ねて話を続けた。
「わが名は、ヤハウェ・サタン。察しての通り魔王だ。おぬしたちアネムプロイドは、今からこの場で『悪魔』『死神』『天使』に分けられる。おぬしたちが選ぶのではなく、こちら側が先ほどのようにスカウトする形だということをわきまえろ。では、先走った者もいる。今回は早めに終わらせるとしようかのぅ。」
選択肢は三つ。何をしても面白そうだけど・・・。でも僕は、先ほどスカウ
トされた。
「あの・・・。僕はさっき、何にスカウトされたんですか。」
「君はね・・・。」
男は一度言葉を止めた。そして、クスッと笑い、ささやいた。
「死神。」
「死神」 生命の死を司るとされる伝説上の神
一般的に大鎌、もしくは小ぶりな草刈鎌を持ち、黒を基調にした傷んだローブを身にまとった人間の白骨の姿で描かれ、時にミイラ化しているか、完全に白骨化した馬に乗っている事もある。
神様なんだか悪魔なんだか。平等というか中途半端というか・・・。
まあ、僕の顔が白骨になる心配はなさそうだし、何になっても同じような事
だろうけど。某アニメじゃないけどこういう世界にあこがれていた。
こんな感じでまた考え事をしてしまった僕。
いつの間にか会議は終わっていた。僕は最初に決まったから特に聞く話は
無い。結局、死神になったのは僕だけだった。
「そして僕はここにいる。」
「いきなり失礼。」
「今までは僕の過去を見てもらった。」
「少々長かったね。」
「こんな事があったのはいつだっけ?」
「もう何世紀も前だったな。」
「みんな、もう忘れているかと思うが、あの刺青はまだついている。」
「今は英国が世界を支配し、華麗な舞踏会を開いている時代。」
「僕はここで生活をしている。」
「じゃあ、もうちょっとだけ待っていてもらえるかな。」
「もうちょっとで、今へ・・・。」