Minimum Bout Act.03
No.9「the earth」
初めて見る地球は、言葉にできない程美しかった。
青と白に包まれたその星はまるで紺色のベルベットに浮かび輝くサファイアのようで、カッツとシンとセイラは先ほどから言葉を発する事を忘れていた。
「そろそろ大気圏だ。シートベルトしろよ」
思い出したようにカッツが言うと、シンとセイラは頷いてシートベルトをしっかりと装着する。
船内にアナウンスと警報音が響き、一度ガクリと大きな揺れを感じたと思うや、強烈なGが3人の体を襲った。
「くっ!」
「ううっ……」
「待ってろよ、地球ーー!!」
「ブラジル……って、植物だらけなんだな」
「違う、カッツ。間引きする人間がいなくなったから、陸地ほとんどが植物で覆われているんだ」
「そこ、低レベルなボケと高度なツッコミはいいから、取りあえずキャンプ張る場所探すわよ……あっ! 今鳥が飛んだわ! 鳥の鳴き声ってこんなに大きいのねー!」
無事地球に降り立ったカッツとシンとセイラは、調査団が消息を絶ったブラジルの様子に目を丸くさせていた。
どこを見ても木や草で、道路だったとおぼしき場所もコンクリートのひび割れた隙間などからぐんぐんと木が伸びていた。ビルや家屋の名残もツタや花で飾られとても鮮やかで、宇宙では見た事もない動物や植物、昆虫などにカッツ達は物珍し気にずっと辺りを見回し続けていた。
「ちょっと! あれ! ライオンじゃないっ!?」
「うおっ! マジかよ、初めて本物見たぜ!」
セイラとカッツは先ほどから興奮しっぱなしだ。
地球を出てから200年、核に汚染されて地球の全ての生物は死滅したと思われていたのだが、最近の調査でかなりの動植物が生き残っていた事が分かった。人間が街を築いていた場所も自然豊かになり、放射能の影響は全く無いと言ってもいいようだ。
「地球の再生機能は人間の想像をはるかに越えていたって事か」
そう一人言いながらも、シンも心の中では興奮していた。本や映像でしか見た事の無かった地球を、実際にこの目で見、手で触れる事が出来ているのだ。興奮しないはずがない。
「しっかし驚きだよな! 何が驚きって、地球の空気がこんなにうまいってことだ!」
宇宙船を降りた瞬間からその事は感じていた。エンド大気生成システムで作られる酸素は、地球とほぼ同じ成分で出来ているはずなのにまるで違うのだ。
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ