Minimum Bout Act.03
地球へ行くにはエンド政府の許可が必要だ。もし許可無く地球へ行った事が発覚すれば、終身刑になる場合もある。だが、地球へ行くにはエンド政府の管理管轄下にある航行ルートを取らなければいけないため、そう簡単に行く事は出来ない。
カッツは嫌な予感を覚えた。
「調査団との連絡が途絶えた地点は?」
「南アメリカ大陸のブラジル辺りよ」
「報酬は?」
「政府からの依頼ですもの、あたしがたっぷり請求してあげるから心配しないで」
「おおうっ、マジですかあーー!! これで飲み屋のツケが返せるっ!」
キラキラ……とは言えないが、目を見開いて乙女チックな表情で喜ぶカッツに、セイラも満面の笑みで答える。
「任せといてよ! だから、結婚して?」
「だあーーっ!? どさくさ紛れに言うな! するかあっ!」
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「……という訳で、今すぐ地球に発つから、さっさと帰って来い」
セイラとは一旦別れ、カッツとシンは必要な物を買いそろえて廃ビルへと戻って来た。
もう夜だというのにルーズはまだ帰っていなくて、カッツがインカムで連絡を取ったのだ。
『ごめん、ちょっと今日はまだ戻れそうにないの』
「ああ? お前朝から何やってんだよ。すんげー今回の依頼はギャラが高いんだよ、逃す訳にはいかねーんだ」
『いつもみたいに待機して情報収集じゃ駄目なの?』
「今回は地球なんだ、観光気分でいいから行くぞ。それにお前がいないと精神的に保ちそうにねえんだ。色々と」
『地球……いやあ、でもちょっと今すぐは無理かな』
「なんでだよ?」
『それが、パチンコ大当たりしちゃって……』
「はあっ!?」
『もう朝から止まらないのよ。最初のお店では勝ちすぎて追い出されるし、次にふらっと入った所でも大当たりしちゃって……あはは』
「『あはは』。じゃねえ! 朝っぱらからてめえは……賭け事なんかで金を稼ぐなっ! 地球だぞ!? まず行けない地球に行けるってのにこの馬鹿! あーもういいっ、お前置いて行くからな! 留守番してろっ!」
『あっ、ちょっ!』
ルーズの返事を待たずして、カッツはブツリと通信を切って鼻息荒く立ち上がる。
「あの馬鹿女! せっかく地球に行けるってのに、パチンコだとお!? 仕事をなんだと思ってんだ!」
荷物をまとめたカッツに合わせて立ち上がると、シンは笑った。
作品名:Minimum Bout Act.03 作家名:迫タイラ