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何度でも、あなたに恋をする~後宮悲歌【ラメント】Ⅱ

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「互いに好きだというのなら、何の問題もないな」
 勢い込んで言うユンに、明姫は吐息混じりに言った。
「私は後宮の女官なのよ、ユン」
「それがどうかしたのか?」
「女官の恋愛は禁止されているわ。私たち後宮に仕える女官は一応、国王殿下のものということになっているんだもの。殿下の臣下であるあなたと私は恋愛はできないの」
 大好きなユンに告げるのは辛かったけれど、ここで彼の勢いに流されて安易に想いを受け入れることはできない。こうやって真夜中に二人だけで密会しているのを見つかっただけで、罪に問われかねないのだ。
 それは自分のためというよりは、将来あるユンのためであった。集賢殿の官吏というからには、ユンは学者なのだ。いずれ、この国を担う未来ある学者の卵をたかだか恋愛沙汰で潰すわけにはゆかない。
 ユンには自分との恋愛などよりも他に、なすべき大切なことがある。立派な学者となり、その学識を朝鮮の発展のために役立てて欲しい。それがユンを心から愛する明姫の願いだ。
「ならば、明姫は私の想いは受け容れられないと?」
 ユンの声が一段低くなった。
 ふいに涙が溢れそうになり、明姫はうつむいた。
「私はユンに立派な学者になって欲しい」
「明姫は国王に遠慮して、身を退くのか? 顔も見たことのない男に操を立てて一生涯、誰にも嫁がず、宮殿で生涯を終えるというんだな」
「仕方のないことなの! 私たち女官は宮殿に入ったそのときから、そういう風に運命づけられているんだから」
「それなら、そなたは相手が国王ならば良いというのか! 相手が王なら、たとえ好きでなくとも、顔を見たことさえない男でも、素直に身を任せ抱かれることができるんだ!」
「お願いよ、困らせないで。判ってちょうだい」
 明姫は立ち上がった。これ以上、彼と話しても意味はなかった。ただ互いに傷つけ合うだけだ。人生で初めて好きになった男、恐らく生涯で一度きりの恋をこんな形で終わらせたくはなかった。
「行くな」
 背を向けた明姫に、ユンの声が飛んでくる。明姫は後ろは振り向かずに消え入るような声で言った。
「短い間だけど、楽しかった。あなたと逢えて幸せだった。ありがとう」
 両開きの扉に手を掛けたその瞬間、いきなり後ろから抱きすくめられた。