もう一度恋をしよう
再会
目が覚めて愕然とした。
まず目に入ったのは見知らぬ天井。続いていつもと違うシーツの肌触り。
おかしいと思いながら身じろぎする身体がやけに重い。
さらに困惑しながら横を向くと、
目の前で見覚えのある男が静かに寝息を立てていた。
佐々木と出会ったのは今から10年ほど前の高校の入学式。
地元から少し離れた高校に入学し、ひとり寂しく教室の隅で丸くなっていた俺に初めて声をかけてくれたのが佐々木だった。
奇跡的に趣味が同じで馬も合い、席も近かった俺たちが仲良くなるまでにそう時間はかからなかった。
学校ではいつも一緒に行動し、休日には毎週のようにふたりで遊んで。
いわゆる「親友」の関係。
だが俺たちは、そこから先の関係に足を踏み出してしまった。
高2の冬、佐々木は胸のうちを俺に告白した。
「好きだ、友達としてじゃなく、恋愛感情として」
男らしく真っ直ぐ告げられたこの言葉は、俺の気持ちを揺るがすには十分だったようで。
情けない話、当時友達と呼べる存在が極端に少なかった俺は、拒否することで佐々木との関係が気まずくなることが怖くて仕方なかったのだ。
今までの関係を壊したくない一心で、俺はヤツの告白を受け入れた。
それから高校卒業まで、俺たちの関係は一変した。
休日には時折佐々木の家を訪れ、身体を重ねたこともあった。
抵抗がなかったわけではない。
だがそれ以上に佐々木との関係が崩壊するほうが怖くて、俺はいつも唇を噛み締めて耐えた。
佐々木もそんな俺に気付いていただろうが、それでも見て見ぬフリをして佐々木は欲望を吐き出した。
高校の卒業式に告げられた「ごめん」の三文字で、俺たちの関係は終わった。
互いに別の大学へ進学し、それから27になる今の今まで、会うことも連絡を取ることすらなかった。
俺は佐々木の存在を記憶の奥底へと仕舞った。
ヤツの苦しそうな顔も、震える声も、
「ごめん」と告げられたときに俺の頬を伝った涙のわけも、
思い出すことも考えることもないまま、俺はこれから先も佐々木という人間を忘れて生きていくつもりだった。
なのに。
今、なぜヤツは俺の目の前で寝息を立てている?