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三ツ葉亮佑
三ツ葉亮佑
novelistID. 46180
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ダンジョンインフラ! 序章〜第一章

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 そうでなくても小さい小部屋一つだけでも五万円貰えるのだから、高校生のおこずかいとしては十分なものだろう。
 なんだか興奮してきたのですぐに拳銃をホルスターに納め、急いで別の術式を展開する。
 丙型二式の転移系魔術<共鳴音転移>。
 低周波音を物体内部に転移、浸透させて反響音を得る。要するにソナーの役割をする魔術だ。普通のソナーとは違い、音が通りにくい層を避けて音を発射したり、物体の代替の座標があればその近くに直接音を転移させる事ができる。特に後者は対象物の四方八方から音を出すから、その精度は普通のソナーとは比べ物にはならない。
 音として構成されている情報要素を術式に代入。魔方陣を地中に張り付ける。そして戻ってくる音を魔方陣へ投影、可視化させた。

 ここで期待した結果が出てくればなんと幸せだったのだろうか。
 同時に、ここで期待がはずれていたらどんなに幸せだったのだろうか。
 ソナーの映し出す、無惨で無慈悲なその出力結果。
 思わず悲鳴を上げてしまう。
 
 ……冗談だろ……?
 人が地中に埋まっている!

 慌てて別の転移魔法を構築する。
 丙型一式の転移魔術<直接座標指定転送魔術>。
 もっとも安全な転移魔術として知られ、座標を口で直接唱える事により術式への代入をより強固なものにする転移魔術だ。
 二重の大きめの魔方陣が出現する。術式が少ないので演算は一瞬で完了し、中央へ収束する。
 魔方陣から次第に人の形が浮かび上がってきた。
 だがそもそもの疑問が。
 果たしてこの埋まっていた人は無事なのだろうか?
 長い間埋まっていたとしたら、下手をするともう命が無いのかもしれない。
 死体を見るのか?
 ゾッとしたが、まだ決まったわけじゃない。
 可能性を信じて、携帯端末で救急車のダイヤルに手を掛けた時。
 またしても俺は目の前の出力結果に度肝を抜かれる事となった。
 
 腰の当たりの高さに展開した魔方陣。
 そこから生れ落ちるようにドサッと落ちてきた人。
 最初は軍人かと思ったが、違った。
 黒いバトルスーツに身を固めているものの、その体つきはどう見ても女性だった。
 胸に羽織っている防刃用のジャケットは無惨に破け、肌が露出している。
 それだけではない。体のあちらこちらに擦り傷や切り傷があり、血が溢れて真っ赤に染まっている。
 その手で大事そうに抱える刀は、恐らく軍用の魔刀。
 拵えが見事な、さぞ名高い名刀なのだろうが、激しく戦った為か刃はボロボロ。最早ただの鉄くずにしか見えなかった。
 顔にはどこかで見たような、遮光のフルフェイスヘルメット。
 そして同じく、どこかで見たような体の曲線美。
 悪い予感がする。
 こんなときは決まってロクな事が起こらない。
 確認しなくては。
 せめて思い違いでいてほしい。
 恐る恐るヘルメットのバイザーを開けてみる。
 そこから覗く顔は白磁のような白さに恐ろしく整った神の美貌。
 青みのかかった瞳にスッと高めの鼻筋。
 唇はついさっきつけていたピンクのルージュ。
 どこからどうみても——

「……あれ……ジン……くん……?」

 知らないうちに、サイレンが神社を取り囲んでいる事に気がついた。

 そこからはもう、記憶が断片的で曖昧なものになっている。

 救急車に同伴して、アヤさんの側にいた。
 運悪く渋滞が起こっていて、いてもたってもいられなくなり救急車ごと病院に転送した。
 集中治療室に向かう時、ガラにも無く俺はアヤさん、アヤさんと叫んでいた。
 倫姉ちゃんが病院に来て、事情を説明しろと言っていたが何も答えられなかった。
 そして疲れ果てたのか、集中治療室の外のベンチで睡魔に襲われて——

 叩き起こされたすぐ後。
 何故か腕に手錠がはめられていた。