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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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まだらの菓子

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Ⅰ文房具



俺こと御津功介(みつこうすけ)は受験生である。
その証拠としてはまぁ…この山と積まれたこの参考書という紙束に更に大量のルーズリーフ、紙付箋等。
机を含めて全部がいかにも燃えやすい状態がある訳で、ここまでやるものを揃えたからには普段勉強はそこそこにやっている、…はずだ。
そして俺は今何かに物凄く集中している。
しかしここで問題となるのが『何に』集中しているかって事だ。
注釈を付けたからにはお分かりの通り、集中しているのは勉強じゃない、誠に誠心誠意心の底から残念ながら。
では何に集中しているか、それは
「リキー!!!!リキーの部屋にあるお菓子全部食べたいから私の代わりにアメリカ行ってーーー!!!!!!」
「どんな要求だ馬鹿姉が!!!!」
これ、である。


**まだらの菓子**


御津勝巳(みつかつみ)、今年で23()歳になる「はずの」俺の姉である。
成績優秀にしてスポーツ万能、才色兼備、性格幼稚、暴虐怠慢、極悪非道、暴飲暴食。
いくつか最後にくっついていなければ何の非の打ち所もない姉である。
これの侵入に対して俺が集中を示さなければいけない理由は単純。

この姉は、俺の、お菓子を、ちょくちょく、盗むのだ!

何をそんなことぐらいと言われるかもしれないがちょっと待ってほしい。
大事なことを1つだけ伝えよう、俺は結構なお菓子好きなのだ。
古今東西東はジパング西にはアメーリカ、様々な所のお菓子を集めるのが唯一と言ってもいい趣味なのだ。
俺がよく海外に行く親に必死で頼んでコレクショリングしているお宝達を「あーこれ美味しそうだから私が食べておいたよーご馳走様」
…等と言われた事も幾度となく有ったために警戒はしておかなければならない、抜かりなく欠かすことなく磐石に。
先ほど親がよく海外に行くと行ったがそれは我が愚姉もその性質は一緒らしく、なんと明日からアメリカに留学だ。
本人曰く「コーラとハンバーガー食べ比べしてくるわ!」とか何とか。
もう太って良いよ、バカ姉。
今日で荷物作りも最後だからここぞとばかりに食べに来るのは分かっていて注意していたのだが予想通りとは…いやはや本当にこれが留学生で良いのかと思わされるが大丈夫なのか日本。
「だからリキー、まずお菓子ちょうだいよ!」
「…まず人の部屋に突撃しておいてそれは流石にマナー違反だろ、というかリキーって呼ぶの止めてくださいお願いします。」
「えー何がかしら?というよりせっかく別れの挨拶に来たお姉さまに茶菓子の一つも出さないなんて、よっぽどマナー違反じゃなくて?」
「ぐ………」
う、と言いかけて止める、ぐうの音所か反論は山ほどあるのだがというかドアを押し開けるな大声出すな勉強の邪魔するな何より人の趣味の物取るなそれこそマナー違反だろおい…等。
ここでうっかりそれを口にしたら…悲しいかな、俺は脳ミソを使う分野では姉に勝った試しがないのだ、口論でもなんでも、悲惨な結果が待っているさ。
勝った試しがないからこそ先ほどのリキ等と言うあだ名で呼ばれている訳なのだが。
ちなみにリキというのは功介の功の字の力の部分なんだそうな、なんでだよ!って思った方は直接我が姉に聞いてみそ。
そんな俺の沈黙をどうとったのかは知らないが姉は満面の笑みを浮かべると某箱なら万は下らないチョコ会社のチョコが入った箱を開け、止める間もなく一つつまみ食い。
「あっ…それはゴディ」
「良いの良いの気にしない、男でしょ?一個だけじゃない?」
…その一個で何百円すると思ってるんだよそのチョコ…と思うが口に出したら負けだ。
別れの最後が数百円で済むなら御の字だから、うん。
「…まぁ良い。」
「おお!!リキがお菓子食べるの黙認した!!じゃあもうちょい食べ」
「寝てる間に目にこし餡塗り込まれたくなかったら止めておけと言っておくぞ。」
「はいはい、止めますよ止めます。」
…おかしい、姉が妙に素直だ。
普段ならここで止まることなく食べ続けているのだが…まぁそれは一旦置いておこう。
「荷物の整理は?その上に『何年も前に終わったはずの受験参考書』が散乱してる部屋の整理は?」
「…う」
姉は部屋を気にすることも無いから汚いとかじゃなく本が散乱している、むしろ本が床。
「終わってもいないのに俺の部屋に来て菓子をねだるな、以上。」
「ねだってない!!強奪しに来たの!」
「なおさら悪いわ!!」
姉を追い出し戸を閉める。
ため息。
どうしてああ強引なのだろうかね。

机に向き直り勉強しようとするが机の上に
‘明日は早めに起きて空港まで見送り!!どうせ暇でしょ?’と書かれた先程のチョコの包み紙と‘合格祈願’と刺繍してある御守りに新品だがごく普通の合格鉛筆と消しゴム。


…昔から器用だったがもはやいつやったかすら分からんなこれは。

でも


まぁこういうところは嫌いではないのだが。




**まだらの菓子**




…何が。

「…クッキーが。」

どうして。

「…分からない…でも」

どうなった。

「……無くなってる!!」

それが発覚したのは姉がアメリカに出発してから一時間後だった。


**Ⅰ文房具、終わり**


作品名:まだらの菓子 作家名:瀬間野信平