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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 外伝 リュリュとカズンのある日の授業風景

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「ふむ・・・褒められているのか、そうでないのか微妙な評価じゃのう。あとはそうじゃのう・・・オリガはもはや武人なのか、一人で軍隊なのかわからないような状況になってしまっておるし・・・そうじゃ、ア・・・クロエやアリスはどうじゃな。」 
 先にアリスといいそうになったのを慌ててクロエを先に言い直したリュリュの様子にやれやれと苦笑しながらカズンが答える。
「はっきり申し上げますと、クロエは全く指揮官には向いていませんし、単純な力のぶつかり合いなら、レオ以下です。その分スカウト能力や、急所への攻撃。魔法の使い方、体術などでカバーしていますけれどね。ですから何かものすごく切れ味の良い刃物でも持っていれば、殺し合いでならいいところまでいくんじゃないでしょうか。後、アリスは・・・」
「なんじゃ。言うてみよ。」
 言いづらそうに口ごもるカズンをリュリュが促す。
「・・・彼女を超えることを目標にされているリュリュ様にとっては面白くない話ですが、正直なところ総合力では誰もかなわないでしょう。私にも矜持と言うものがありますから、将軍との兼任軍師の彼女に軍略で負けるなどと言うつもりはありませんが、一対一での戦闘では当然全く歯が立ちません。逆にソフィアあたりは一対一の正面きっての対決では負けないでしょうが、そこに戦術を使う必要がでてくれば、惨敗するでしょうね。あとは、アレク付きのメイドをやっていた経験もありますから、そのあたりのメイドには家事や料理でも負けないでしょうし、医療知識もかなりのものです。」
「ふむ・・・ではアリスの強さの秘密はスペシャリストではなく、ジェネラリストである事だというわけじゃな。」
「ところが、あいつのタチが悪いのはスペシャリストの側面がないわけではないというところなんですよ。事、音や歌に関してはアリスに並ぶものは皆無です。軍の楽団長も、著名な作曲家もあいつにはかなわないとさじを投げるんですから。」
「ではどうしろというのじゃ!」
 突然癇癪を起こしたように両腕を突き上げて叫ぶリュリュに、カズンはしばらく考えた後でポツリと言った。
「ユリウス王子のスペシャリストになるしかないのではないでしょうか。」
「ゆっ・・・。」 
 カズンの提案を聞いて、リュリュが顔を真っ赤にして言葉に詰まる。
「リュ、リュ・・・リュリュはユリウスのことなどどうとも思っておらぬわ!」「ああ、そうでした。申し訳ございません。」
 リュリュの慌てふためく様子に、笑いを噛み殺しながらカズンが形式だけ頭をさげて詫びた。
「も、もう今日は下がって良い。あ、あとで宿題だけよこせ。軍略の勉強は必要じゃからな。」
「は・・・かしこまりま・・くくっ・・・」
「ええい、もう下がれ、次回は来週じゃ!」
 リュリュの怒鳴り声にはじかれるようにして部屋を出たカズンは、廊下で次の授業の講師であるキャシーに出くわした。
「あ、カズンさんこんにちは。」
「ああ、こんにちは。これからリュリュ様の授業?」
「ええ。カズンさんは今まで授業だったんですよね。」
「はは・・・まあね。ちょっとリュリュ様を怒らせちゃったから、もしかしたら君の授業に影響が出るかも。」
「えー・・・一体何したんですか?」
「恋の話を少々。」
「プ・・・カズンさんが恋って。」
 気取った表情で恋などと口走るカズンの様子に、キャシーが思わず噴きだすが、当のカズンは当然面白くない。
「・・・何気に失礼だな君は。」
「だって、カズンさんって、あんまり恋とかしなさそう。」
「だから失礼だな君は。俺だって恋くらいするさ。」
「そうなんですか・・・それなら相手は多分アリスですよね?」
「え・・・?は・・・はあっ?なんでそんな事を君がわかるんだ?もちろん違うぞ。違うけど、俺がアリスを好きだと君が誤認してしまった言うのならその根拠を示してもらおうじゃないか。それがわかれば、俺も態度を改めて、他の誰かに誤解されることもなくなるだろうし。」
「根拠なんかありません。女の勘ですよ。」
「か・・・勘なんて不確かなものでそんなことを言い回られては迷惑だ。絶対に誰にも言うなよ。憶測は時に人を傷つけることもあるんだからな。」
「はいはい。そうやってムキになったってことも黙っておきます。」
「ぜ、絶対だからな。」
 カズンはそう言って念を押すと、キャシーが歩いてきた方へと歩き去って行った。
「あちゃあ・・・あの人もまた重症だなあ。」
 何度となく自分の足にもつれて転びそうになっているカズンを苦笑まじりで見送った後でキャシーはリュリュの部屋へと入った。
「リュリュ。お勉強の時間よ。」
「あ、お師匠。もうそんな時間ですか?」
「カズンさんとお話が盛り上がってたみたいだし、気づかなかったのかしら?」
「カ・・・カズンとは別に盛り上がっていたわけではないのじゃ。あやつめ・・・あやつめ・・・。」
 カズンと話していた内容を思い出したのか、不満そうにブツブツ言いながらうつむくリュリュの頭に手をおいて、キャシーが微笑んだ。
「安心してリュリュ。あなたの仇は、ちゃんととっておいたから。」
「仇?仇とはなんですかお師匠。」
「んー?・・・ひ・み・つ。」
 そう言ってキャシーは、人差し指で自分の口元を抑えるようなジェスチャーをしながら、いたずらっぽく笑った。