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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
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ゲイカクテル 第6章 ~ DANCE AWAY ~

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次の日の昼、アレックスはゲイカクテルの現状を話しにロンの部屋を訪れた。いつも通り一旦昼に家に帰るロンは、アレックスをリビングに通した。
「ゲイカクテルの捜査はどうなってるんだ」
「ビリーの情報だけで、進展がなくて困ってるところだ」
「そうか。ジュンク・ポランスキーの件は聞いてないか?」
「なんだ、それ」
「ゲイカクテルの大ボスだ。この間オーランド郡で暗殺された」
「なんだって!? 大ボスが暗殺された?」
「あぁ。それでルートなんだが、共和国からオーランド郡で密輸して広まり、帝都ノイキルヒとホランド郡に流れてきているらしい」
「そうなのか。じゃあ、連絡を取り合わなきゃいけねぇな。今晩、緊急会議を開くように係長に進言するわ」
「そうしてくれ。三日後に取引があるから、早くルートを潰すように準備しておかんとな」
「そうだな。明日には合同会議を開かなきゃいけねぇな。情報ありがとな。早々に取り掛からなきゃならねぇ」
「礼には及ばん。じゃあ、また何かあったら報告する」
「おぉ。昼食ったら早々に連絡取り合うわ」
 アレックスはロンの部屋を出ていった。ロンは昼食をパントエスプレッソだけにし、署に走って戻り、オーランド郡警察とノイキルヒ警察に電話をした。

 その頃、オーランド郡警察はジュンク・ポランスキー暗殺事件の犯人の洗い出しをしていた。バウンティー・ハントの対象になっていたので、そこから洗い出していたらデッドリー・ワークスに行き当たった。二人の刑事が社長のアンドレアに面会しに来た。年輩の刑事がアンドレアに質問した。
「ポランスキーを殺ったのは誰ですか。ここが紹介したそうですが」
「ミニッツ・サンダースです。ムニョスのところのガンマンです」
「ムニョスの? ミニッツ・サンダースという人はどういう人ですか」
「元軍人です。オーランド紛争の英雄だそうです」
「そうですか。今もムニョスのところにいますか」
「さぁ、それは分かりかねます。いつもフラッと現れるので」
「ムニョスと連絡は取れますか。ムニョスから話を聞きたいのですが」
「いいですよ。すぐに電話します」
 アンドレアは脇にある電話の受話器を取り、ムニョスの電話番号をダイヤルした。子分が出たので、名前を告げてムニョスに代わってもらう。ムニョスが出ると、アンドレアはオーランド郡警察の刑事がミニッツ・サンダースについて話が聞きたいと言っている旨を伝え、ムニョスが快諾したので受話器を年輩の刑事に手渡した。
「もしもし、ムニョスさん。ミニッツ・サンダースは今そちらにいますか」
「いないが、どうかしたのか」
「ジュンク・ポランスキー暗殺事件についてですが、ミニッツ・サンダースはあなたのところのガンマンなんですよね」
「一応そうだが、奴は風来坊だからな」
「どうやって連絡を取るのですか」
「ホランド郡のロゴス・エルナンデスに連絡を取ってもらう」
「それはその人のところのガンマンというコトですか」
「それは知らん」
「ミニッツ・サンダースは元軍人だそうですが、詳しいコトは分かりますか」
「オーランド紛争の英雄としか知らん」
「軍司令部に行かないと分かりませんか」
「たぶんそうだと思うが」
「分かりました。ありがとうございます」
 年輩の刑事が受話器をアンドレアに返し、アンドレアが電話を切った。そしてミニッツ・サンダースのバウンティー・ハンター登録証の顔写真入りのコピーを欲しいと言うので、アンドレアは一人の事務員に頼んだ。その事務員はパソコンでミニッツ・サンダースのデータを呼び出してプリントアウトし、それを年輩の刑事に手渡した。二人の刑事は礼を言い、デッドリー・ワークスを後にし、オーランド郡軍司令部へと車で向かった。
 司令部に着くと、二人は警察手帳を見せて用件を伝え、情報部の退役軍人照会室に通してもらった。もう一度用件を伝えると一人の職員がパソコンで検索した。ミニッツ・サンダースの情報が映し出される。
「元九〇一後方支援部隊大佐としかありません。あとはトップシークレットになっています」
「どういうコトですか」
 年輩の刑事が尋ねると奥から室長が答えた。
「頭に九がつく部隊は特殊部隊だ。大総統の許可がないと見るコトはできない」
「それは可能ですか」
「まず無理だろう。余程のコトがない限り見られない」
「ジュンク・ポランスキー暗殺事件の犯人なのですが、それでも駄目ですか」
「その事件は知っている。だがバウンティー・ハンターなのだろう? それでは駄目だ」
「分かりました。ではミニッツ・サンダースを知っている元隊員は分かりますか」
 先程の職員が元九〇一後方支援部隊の情報をさらうと、一人該当者がいた。
「退役軍人病院にイワン・ワイルドという元大尉が入院しています」
「そうですか。では訪ねてみます。ありがとうございました」
 二人は礼を言って部屋を後にし、司令部を出た。そして司令部の隣にある退役軍人病院に歩いて向かった。二人は受付でイワン・ワイルドの病室を尋ね、その病室を訪れた。病室は六人部屋だった。イワン・ワイルドは誰かと問うと、右奥で一人の男が手を挙げた。二人が近づいていくと、イワン・ワイルドは半身を起して点滴を受けていた。警察手帳を見せ、ミニッツ・サンダースについて尋ねた。
「懐かしい名前ですね。どうしたのですか」
「ジュンク・ポランスキーという麻薬王の暗殺事件の犯人なのです」
「そうですか。大佐は射撃の腕が良かったですから」
「そのようですね。恐らくレノンの丘から狙ったものと思われます。距離にして八百メートルです」
「可能ですね。大佐の最大射程距離は約一キロですから」
「凄腕ですね。他には何かありますか。話せる範囲で構いません」
「もう話してもいいかもしれませんね。私達は最初の一年間は共和国に潜り、スパイ活動をしていました」
「ほう。オーランド紛争は三年間でしたよね」
「はい。一年経って後任が派遣され、私達は前線に立ちました。その一年後の酒屋潰しの夜に当時の司令官が亡くなり、当時中佐だった大佐が司令官になりました。そして国境線を元に戻して終結を迎え、オーランド紛争の英雄として名を残し、大佐に昇格しました」
「なるほど。酒屋潰しの夜は覚えています」
「それから一年後に除隊して行方知れずです」
「ホランド郡のマフィア、ロゴス・エルナンデスと交友があるらしいのですが、何か知りませんか」
「私達九〇一後方支援部隊は元々ホランド郡軍司令部の所属です。そういうコトがあってもおかしくはありません。私は紛争中に負傷し、その上癌にかかり、ここにいるんですけどね」
「そうですか。これは失礼しました」
「いいえ。お気になさらずに。他に聞きたいコトはありますか」
「いえ、ありません。ご協力ありがとうございました。お大事にして下さい」
「ありがとうございます」
 二人はイワンにお辞儀をして病室を出た。
 署に戻ると、年輩の刑事のデスクの上に伝言メモが貼ってあった。そこにはホランド郡警察殺人課ロン・カーターとあり、シルバーブルーについて話があるとの内容だった。年輩の刑事は早速ホランド郡警察に電話をした。