小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
novelistID. 31338
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ゲイカクテル 第5章 ~ STUPID ~

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「それも値が張るがいい所だぞ。東洋の大日本帝国の老舗旅館『百足屋(むかでや)』って所が出した海外一号店だ。着物を着た仲居っていう女性が世話をしてくれる。大日本帝国の造りの家屋で、各部屋の外には個人風呂があるが、大浴場の岩風呂もいいぞ。露天風呂なんだが、大日本帝国の庭園を見ながら入れる。料理も大日本帝国の伝統的な食事で、夜は京懐石っていうのが出る。そこにするのか」
「はい。そのつもりです。いいコト聞いたなぁ。ますますアインスに泊まりたくなってきた」
「浴衣ってのを着て過ごすらしい。無料で着物を着せてもらって、写真を撮ってもらえるそうだ」
「いいなぁ。記念に撮ってもらおう」
 二人はグラスを空けて、互いに注ぎ合う。クリストは五年の付き合いだ。ロンの部屋に仕事でアレックスとビリーが訪れた時、偶然クリスと居合わせた。ビリーもクリスも一目惚れだった。それを機にビリーは男遊びをやめた。以来二人は五年間、恋人同士だ。
 ビリーは後片付けを終え、冷蔵庫からジンジャーエールの瓶を取り出し、棚からグラスを取り出してテーブルに戻った。栓を抜いてグラスに注ぎ、二人の会話に混じった。
「ビリー、クリスが今度三連休が取れたら、タンジールランド郡のキュアーズに連れて行ってくれるそうだ」
「えっ!? いいんですか、クリス」
「いいよ。行こう。たぶん夏前になると思うよ」
「親分もいいんですか」
「あぁ、いいよ。仕事が入っていても行かせる」
「嬉しいです。ありがとうございます」
 ビリーは嬉しくて、ジンジャーエールを一気に飲み干した。新しいジンジャーエールを取りに席を立ち、冷蔵庫から出してテーブルに戻った。旅行なんて久し振りだ。アレックスとも最近行っていない。
「あっ、そうだ。キュアーズの近くに帝国博物館と帝国美術館があるから、行っておいで。両方共寄付で入れる上に、いっぱい作品があるから」
「はい、アレックス。いろいろありがとう」
「私はホムンクルスしか知らないですから、どこでも嬉しいです」
「そうだな。ホムンクルスのコトがあるからなんだろうけど、楽しんでおいで」
「はい、親分」
「じゃあ、私は走ってくるから。あとは二人でごゆっくり」
 アレックスはジャック・ダニエルを吞み干すと自室へと行った。スポーツウェアに着替え、春とはいえまだ夜は冷えるため、ニット帽を被って時計をはめた。「じゃあ」ともう一度言い、外に出た。やはり夜は冷える。アレックスは走り出した。十キロを約一時間かけて走る。六分で一キロペースだ。ちょうどいいペース配分だった。
 部屋では、二人がグラスを空けるまで語り合っていた。その間にビリーはクリスのために風呂の用意をした。ビリーは入れない。首の後ろにあるデジタル端末の穴に水が入るとショートするからだ。だからビリーは水のいらないシャンプーとリンスを使って頭を洗い、タオルで体を拭くだけである。クリスは一緒に入りたかったが、こればかりはしようがない。
 グラスが空くとクリスは風呂に入り、ビリーは自室へと行った。ビリーは洗い終えるとパジャマに着替え、クリスが風呂から出てくるのをベッドの端に腰を掛けて待った。二十分ほどしてクリスが部屋に入ってきて、ビリーの横に腰掛けた。二人は他愛もない会話をしながらいちゃついた。そしてクリスがビリーを押し倒してキスをすると、ゲイカクテルを飲ませた。
「なんですか」
「セックスが良くなるやつ」
「そうですか」
 二人は何度もキスをしながらいちゃついた。しばらくして互いにフェラチオをしている最中、ビリーは気分が悪くなってきた。しばらくは我慢していたが、胃から込み上げてくるものに耐え切れずにペニスを吐き出し、トイレに突進して吐いた。驚いたクリスは慌ててパジャマのズボンを穿き、ビリーの後を追ってトイレに行った。ビリーは吐き続けていた。
「大丈夫? どうしたの」
 そう言いながらクリスはビリーの背中をさすった。なおもビリーは吐き続けた。そこにディータで一杯引っ掛けてきたアレックスが帰ってきた。クリスは慌ててアレックスを呼んだ。アレックスがトイレに行くと、ビリーは吐き終えていて、トイレットペーパーで口を拭って水を流していた。
「何があったんだ」
「分かんない。ビリーが突然吐き始めちゃって」
「なんか変なもの飲ませたか」
「う~ん。そういえばゲイカクテルを」
「おいおい。勘弁してくれよ。ビリーは病気をしない代わりに薬を一切受け付けないんだ。ヤクなんてもってのほかだ」
「ごめんなさい。ビリー、立てる?」
「大丈夫です」
 ビリーは立ち上がった。クリスは二人に平謝りした。三人はビリーの部屋に行き、ビリーをベッドに寝かせた。
「念の為、生食(せいしょく)を点滴する。用意するから待ってろ」
 アレックスは倉庫にしている部屋に行き、点滴吊りに生理食塩水の一リットルパックを吊り下げて注射針を付け、サージカルテープを持ってビリーの部屋に戻った。クリスはビリーに布団を被せ、胃の辺りをさすりながら謝っていた。アレックスはクリスをどけて布団をめくり、生理食塩水を飛ばして注射針の空気抜きをし、ビリーの右腕の血管に注射針を刺した。そしてサージカルテープで固定して、生理食塩水が流れているのを確認した。
 アレックスはクリスの頭をはたき、ビリーの様子を見ておけと命令して部屋を出ていった。二時間後、点滴が終わったので、クリスはアレックスを呼びに行った。アレックスは生理食塩水がないのを確かめて注射針を抜き、止血テープを貼って出ていった。ビリーは起き上がり、トイレで用を足して戻ってきた。二人は一緒にベッドに入って寝た。クリスはずっと謝っていた。
 次の日、アレックスは早起きをしてビリーの様子を見に行った。ビリーは元気そうだったが、アレックスは今日一日ゆっくりしていろと言った。そして家事は全てするので安心しろとも言った。その言葉通り食事も作って三人で食べ、昼にビリーがする予定だったオール・トレード商会のビラを中央広場で配った。クリスはずっとビリーに付き添い、夕飯の後にまた謝り、家に帰っていった。アレックスはまだ心配だったので、走りに行くのをやめて家吞みにした。