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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
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ゲイカクテル 第5章 ~ STUPID ~

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次の日に夕方、ロンの部屋に弟のクリスが訪れた。クリスは軍需工場で兵器を作っている技師だ。
「夕飯は? なんなら作るけど」
「あっ、いいよ、兄さん。ビリーの所で食べるから」
「そうか。仕事はどうだ」
「ジーマのニューモデルが出るから、ちょっと大変だよ」
「へぇ。ジーマは警察でも使うオートマチック銃だからなぁ。どう違うんだ」
「ジャムが少なくなる。今、百回に一回くらいだけど、千回に一回くらいに抑えられる。ただちょっと重くなるけどね」
「へぇ。そうなんだ。でもそんなに重くはならないだろ?」
「うん。十グラム」
「十グラムか。今のジーマはオレにはちょっと軽いからちょうどいいかもな。反動とか射程距離は? 口径によるけど」
「ニューモデルは口径三十八で、反動は変わらないけど、射程距離は十メートルは伸びるよ。精度も上がってるから」
「おぉ、いいなぁ。配備されないかなぁ」
「マイヤーズのニューモデルも話が出てるよ」
「リボルバーか」
「六発を七発にできないかって話らしいよ」
 二人は夕方にもかかわらず、ジャック・ダニエルを吞みながら語り合った。ロンは三人兄妹の長男で、クリスの下には妹がいて、もう結婚していて子供も一人いる。クリスはゲイでビリーの恋人だ。両親には紹介しているので、もう親公認の恋人同士だ。ロンはサイボーグという引け目からか、恋愛には奥手である。どちらかというとノンセクシャルかもしれないと思っている。性欲もあまりない。
「ビリーとはどうなんだ」
「順調だよ。そろそろ婚約しようかと思ってる」
「おぉ、そうか。結婚したらどうするんだ」
「そこなんだよねぇ。ビリーを今の所から引き離したくないんだよねぇ」
「じゃあ、通い婚か」
「そうなる気がするよ。今住んでる所、線路の北側じゃん。この辺りに越してこようかと思ってさ」
「でも職場から遠くなるじゃねぇか」
「それは苦にならないよ。夢は一軒家なんだけどねぇ。そこにオール・トレード商会も入れて、三人で暮らせればいいなと思ってる」
「アレックスも住まわせんのか」
「ビリーには必要な人じゃない?」
「あぁ、そうか。そうだな、うん」
 帝国では十年前、アドリアーノ四世が皇帝に就いた時にゲイの結婚と夫婦別姓を認めた。ゲイ夫婦が養子を取ることも認められ、そういう家族が増えてきている。
「兄さんはどうなの。いい人いないの?」
「オレはいねぇなぁ。正直、興味ねぇんだよな。面倒くせぇんだよ」
「そうなの。風俗は? レインボー・ストリートには行かないの?」
「行くけど、年に数回だな。スキレットにしか行かねぇな」
「淡泊だなぁ。僕はヤリたいばっかだよ」
「うるせぇなぁ。スキレットのスーザンは結構気に入ってはいるけど」
「じゃあ、アタックすれば?」
「オレはしょせん客だ。よくはしてくれるけど、それは仕事だからだろ」
「分かんないよ。挑戦してみなよ」
「分かった、分かった。機会があったらな」
「またそういうコトを言う」
 二人はジャック・ダニエルを吞み干した。互いに注ぎ合う。スキレットは高級風俗で優良店だ。美人揃いでも有名である。セックスなしでもバーを併設しているため、酒だけでもオーケーである。ロンはいつもスーザンとセックスした後、一緒にバーで吞む。閉店まで吞むため、独占状態だ。スーザンも途中で指名が入っても断る。客も相手がロンだと知ると退く。刑事だと知られているため、皆後々のコトを考えて退くのだ。ロンはレインボー・ストリートやゲイストリート、アネッサ通りに家の前のバッカス通りでは顔が知られている。ロゴスにも知られていて。よくしてもらっている。
 ホランド郡警察殺人課のロン・カーター警部補は、大学出のエリートのくせに一匹狼で、色々と恐れられていた。その点ではオール・トレード商会も引けを取らない。むしろ上かもしれない。バックに軍とマフィアがついているので、ホランド郡中に知れ渡っている。にもかかわらず仕事は来ない。来ても手に負えないものばかりだ。皆、最終手段だと思っているらしい。ビリーは地域密着を目指しているので困っている。アレックスは大きなヤマにしか興味がない。たまに金に困り始めると、ビリーはアレックスの尻を叩き、仕方なくアレックスは動く。バウンティー・ハンター協会にも登録しているアレックスは、それで賞金を稼いでくる。だが大半はアレックスの酒代に消える。困ったものである。
 七時になり、クリスはビリーの所に行くと言ってロンと別れた。五〇二号室に着くと呼び鈴を押し、ビリーが出迎えた。クリスはビリーにキスをし、アレックスに手を振った。ダイニングのテーブルには三人分の夕飯が並べてあった。いつも通りアレックスとビリーは向かい合わせに座り、クリスはビリーの隣に座った。クリスが土日休みなのは久し振りである。仕事柄、土日は交替で出勤である。年中無休で工場は稼働しているので、なかなか休みが取りにくいが給料はいい。
「今度ジーマのニューモデルが出ますよ」
「そうか。まぁ、私は軍から貰った銀のフォア・ローゼスで十分だがな」
「以前見せてもらったあれですか。メンテナンスはしてますか」
「あぁ。定期的にガンスミスのクリストファー・ロンバートに見てもらってるよ」
「そうですか。マイヤーズのニューモデルの話もあるんです」
「そうか。大変だな。よくこの時期に連休が取れたな」
「えぇ。奇跡ですよ」
「クリスに会えて嬉しいです」
「僕もだよ、ビリー。ここ三か月、ずっとジーマに付きっきりだったからさ」
 三人が夕飯を食べ終えたので、ビリーは後片付けを始めた。アレックスは棚からジャック・ダニエルのボトルとグラスを二つ取り出してテーブルに戻った。グラスに注いで、一つをクリスに勧めた。二人は乾杯をして、一口吞んだ。
「マイヤーズの企画書が通る前に、三連休貰えるんですよ。ビリーと一緒に旅行しようと思うんですが、いいですか?」
「いいよ。行っておいで。仕事が入っていてもビリーを出すから」
「ありがとう」
「どこに行くつもりだ」
「タンジールランド郡のキュアーズに行こうかと」
「おぉ、温泉街か。いいな。私もショーンと行ったコトがある」
「そうですか。僕は初めてなんです。どこかいい所知っていますか」
「そうだな。穴場ならアピネス山の展望台がいいと思うな。山の花畑も一望できるし、夜景も綺麗だ。その代わりケーブルカーやトロッコはないからな。道はできてるから大変じゃないが、朝から行った方がいい。展望台にはレストランがあるから、そこでゆっくりするといい」
「へぇ、いいなぁ。あとタンジール牛の美味しい所知っていますか」
「値は張るが、ルボックスっていうレストランがいいぞ」
「値段は気にしないですよ。いい旅にしたいから。あとアインスっていう『旅館』って言うんですか? そこはどうですか」