恋の結末
いつも通りに学校は終わり家に帰り着いた。
由良が放課後どこかに遊びに行かないかと誘ってくれていたのだが、そんな気分じゃなかったので断っておいた。
「ただいまー」
そう言って部屋の明かりをつける。
「おかえりー、たっくん」
明かりをつけた先に立っていたのは葵だった。エプロン姿でニコニコとこっちを見ている。
なんでこいつが家にいるんだ?
「あー、いま"なんでこいつが家にいるんだ?"って考えてたでしょ」
む……超能力か。
「朝、たっくんと約束したじゃん」
確かにそんなこともあった。
しかし、僕が聞きたいのは、
「どうやって僕の家の中にはいったんだ?」
ということだ。
すると、葵はちょっと照れた様に笑うと言った。
「おばちゃんがね、たっくん一人だと心配だから旅行行っている間面倒見てあげてって」
「私に家の鍵を預けてくれたんだよ」
葵はそう言うとポケットから鍵を出して見せた。
あのババァ。
僕は自分には何一つ言わなかった母親をうらんだが、
寂しく一人で食事するはめにならずに済んだのは確かだった。
「どうしたの?」
返事をしない僕に戸惑ったのか葵は心配そうな声を上げた。
「そんなことない、とっても嬉しいよ」
僕のそのセリフを聞くと、葵はすぐにふわぁという風に笑顔に戻り、
「早くしないとご飯がさめちゃうよ」
手招きしてくれるのだった。
僕はリビングに入った。
明かりのついたリビングはいつもと同じ暖かさを僕に感じさせてくれる。
机の上にはまだ湯気を立てたきちんと整った、しかしどことなく手作り感の漂う料理達が並んでいた。
早速イスに着いて手を合わせる。
「いただきます」
葵は向かいの席に座ってこっちをじっと見ている。見られながらの食事は意外と緊張する。
元々料理上手な葵のことだきっと味はおいしいに違いない。
僕はきれいな形をした卵焼きを橋でつまみ、口に放り込んだ。
「うまい。葵、お前こんなに料理上手だったか」と僕はつい感嘆の声を上げた。
「もう、失礼だなあ」
ほっぺたをプクッと膨らませて葵は抗議の声を上げた。
が、すぐさま間の抜けた顔をして、
「えへへ、うまいだって〜」
とか言っていた。
「おーい、葵。帰ってこーい」
「ふぇ? あ、うん。大丈夫。それじゃ、私もいっただきまーっす」