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恋の結末

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 早速厭戦気分が僕の部屋には流れていた。
 葵はベッドに腰掛けている。
 安芸は「ちょっと天気予報見てくるわ」と言って下のリビングに降りていった。
「おいおい、この嵐は引きそうにないなあ」
「困ったよお」
 葵は半分泣きそうな顔をしている。
 葵の横には簡易式の天体観測器具が準備されている。
「せっかくたっくんと一緒に観測するチャンスだったのに」
「まだ諦めるな。雨が降った後の方が星も綺麗にみえるだろ」
 僕も葵の横に座る。
「うん」
 まあ、ぶっちゃけた話僕自身嵐が引くことはないだろうなと思っている。
 それを裏付けるかのように遠くで雷の音がした。
 と、ドアを勢い良く開いて安芸が部屋に飛び込んできた。
「まったく望みがなかったわ。屋内退避まで出とったで」
「あう、どうしよう」
 葵が困ったような泣きそうな声を上げる。
「どうしようもないだろう。また一緒に別の出し物を考えよう」
「そうじゃなくて……」
 モジモジしながら葵は「これじゃ家に帰れないよ」と呟いた。
「なんだそんなことか。泊まって行ったらいい」
 言っちゃあ何だが僕の家は大きい方なので空き部屋の一つや二つぐらいある。
 それに親もいないしね。
 ただ、なぜか安芸が複雑な顔をしていた。
「わーい。たっくん、うれしいっ」
 そう言って葵は僕に飛びついてくる。
 それを僕は綺麗に躱す。
 ズガッという音と共に葵が地面に倒れ伏す。
 あーあ、なんで僕はこんな事しちゃうかあ。
「まず、風呂入って来い」
 それでも口だけは動く。……なんとも便利なものだ。
「ふぁあい」
 ふらふらーっと部屋を出て行く葵。
 その姿が見えなくなると、安芸がコソッと近づいてきた。
「チャンスやなたく」
 複雑な顔をしたままの安芸が言う。
「何がだよ」
「男女が一つ屋根の下で一晩過ごすんやで……。これをチャンスと言わずになんと言うんや」
「おい」
「……頑張るんやでっ」
 そう言い残すと安芸は部屋を出て行った。
「まったく。無責任な奴だな」
 恋を成就させてくれるんじゃないのかよ。
 どうも最初ほどの意欲を感じない。
 まあ、別に良いと言えば良いのだが。
作品名:恋の結末 作家名:なお