恋の結末
暑い、ちょっとばかり暑すぎはしないだろうか。
地球温暖化を切実に感じる。やっぱり僕も一日五分は息を止めようかな。
暑さ一周まわって冷静になりちょっとした哲学者の気分になった。
夏……プール、水着!
「たっくん、周り……皆見てるよ」
「ええっ、僕、今、声に出してた?」
「う、うん」
そう言って葵は顔をちょっと伏せた。
周りの人がチラッとこっち見てる。
「これだから最近の子は」「どーせひと夏の夢でも見ようとしてるんでしょ」「私だってもう少し若かったら」
ええ、今の世の中では哲学者はただのニートですから。
ってかほとんど嫉妬じゃないのかな。
セミはミンミンと鳴とただでさえ暑い夏を更に暑くするために励んでいる。
そんな煩悩に頭の八割を支配されながらも僕は残りの二割で安芸の耳打ちについて考えていた。悩みか……葵とは対極の存在だろうな。
今日の葵はいつもとちょっと違うなと思う点が無くもなかった。
どう? と聞かれても答え難いが、長年一緒だから分かる勘という奴だろうか。
「なあ葵、最近、何かあったのか?」
「……うん、ちょっと生徒会室に呼ばれてね」
生徒会か。
優良枠で生徒会に入って女の子ばかりのハーレムを作った友人がいたなあ。
うん、僕にもそんな行動力が欲しいよ。
――ってそんな事じゃあなくて。
「なんだって生徒会なんかに呼ばれていたんだ?」
葵は悩むような素振りを見せたが話してくれた。
「廃部になるかもしれないの」
葵の入っていたクラブって何だったけ?
葵は続ける。
「去年、たっくんが全員卒業しちゃって後輩もいないし今は私一人なの」
「そうか……」
誰もいなくなった部室で一人活動する姿を思うとなんだかやるせなくなった。
「それで次の文化祭までに何らかの成果がないと廃部にするって言われちゃった」
そう言うと葵はクイッとこっちを見上げてきた。
頭一つ分小さな体は普段なら気にならない。
だが、こういう時にふときになるんだよなあ。
「わかった、わかった。で、何をするんだ?」
葵が「えっ」と言って立ち止まる。
「ったく、手伝ってやるよ」
「うん、ありがと」
「で、何をするんだ?」
「天文部だから……」
「えっ、天文部だったのか?」
「……たっくん、何部に入っているかも知らないで手伝うって言ったの?」
葵がジト目でこっちを見てくる。
「はは、ごめん」
「どうしてそんなに気を持たせるような事、言っちゃうのかなあ」
「え? 何か言った?」
「ううん、なんでもないよたっくん」
「そうか、で、何をするんだ?」
「そのことなんだけど……まだ考えついてないの」
「けど、やっぱり天文部なんだから星の観察とかをするんだよな」
「うん」
「だったらさ、僕の家に来て一緒に観察しよう!」
「ええっ、なにをいきなり」
「イヤか?」
「ううん、全然大丈夫だよ。むしろやりたいぐらい」
こうしていつかお泊り天体観測を行う事となった。