▽夏彦先生の顔が赤いワケ
駆け引き
「やっぱりした」
「ハァ?どっちだよ!ハッキリしろ!」
日向の曖昧な返事に腹が立ち
俺は強く言い放った。
「う~ん、正直なとこ・・キスまではしたよ」
「は・・?」
唇が急に熱くなった気がした。
心臓がバクバクして、立っていられなくなる。
「ははっ、それもどうせ冗談だろ・・?」
「だって先生が・・・ねぇ~」
楽しそうにニヤっと笑いながら俺を見る日向。
「言ってくれ!俺が一体なにを言ったんだ!」
「嫌だ。タダでなんて絶対言わない」
舌を出しそっぽを向く日向。
「はい?」
「キスしてよ。そしたら全部教える」
一瞬時間が止まった気がした。
『キスしたら全部教える』
キス?俺が?日向に?
「おーい」
固まっている俺を下から覗き込むように見
俺の反応を楽しむ日向。
「あんまり大人をからかうなよ」
日向は壁にもたれ、腕を組みなおした。
「でも知りたいんでしょ?あーぁ俺、いきなりあんなこと
されたらなぁ~」
・・慌てるな俺。
俺は今、コイツに挑発されているだけだ。
キスしたのが本当かも分からないのに
そんな条件飲み込めるわけねぇじゃん。
だけど、もしこれが本当だったら。
握り締めた拳は手汗でべたべたになっていた。
昨夜の俺は一体日向になにをした?!
そして、なにを言った!
生唾をゴクリを飲み込み、拳を握り締め
俺は日向を睨んだ。
「分かった。するから・・絶対言えよ?」
「嘘はつきませんよ」
プライドなんて感情はもう
俺の辞書にはなかった。
作品名:▽夏彦先生の顔が赤いワケ 作家名:豆もや氏