待雪草
私はそのまま眠ってしまったようでした。翌朝、瞼を叩く光に目を開けた私は一瞬呆然とし、すぐに思い出します。確か冴様と共に、そう覚えて横を向いた私が何を思ったか、今ではもう忘れてしまいましたけれど、光景だけははっきりと浮かぶのです。そこには小さな水溜りのみが残されておりました。色も匂いも何も残ることはなく、触れてみるとその妙な温かさだけが感じられます。そこに落ちる、より暖かな雫はおそらく私の泪であったのでしょう。私はその日、静かに泣きました。
彼が消えた翌日、冬祭りの片付けが終わるのを見届けた私は、母に見送られながら再び都へと発ちます。自分の胸の痛みも、流した泪も、そのときはまだよくわかっていませんでした。乙女を嘆くのはずっと後のことです。
――ああ
雪が降ってきたのでした。私が祭りに帰る前に済んだ初雪以来、不思議と降っていなかったことは次帰ってきたときに聞く事になります。
私はそんな雪の落ちる様子に押されて、歩を進めるのでした。
彼が溶けてしまったのか、どこかへ行ってしまっただけであるのか、定かではありません。それより冬祭りでも見ることはなく、彼の感触ももう思い出せません。でも、私はやはり密かな想いを持って故郷へ帰るのです。彼が消えた場所に咲いた花、それを見て私は冬を終えます。
私の恋の、最初のまなざし